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5/27/2009 NHK「インドの衝撃」の衝撃谷川昌幸(C)
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NHKスペシャル「インドの衝撃(1)膨張する軍事パワー」(5月24日)をみた。なかなかの力作。衝撃的といってもよい。2,3分みただけで,金と時間をたっぷりかけ,制作したことがすぐ分かる。
コーディネーターはD・ビスワス氏とA・ドゥリア氏。どのような方か存じ上げないが,インド側の制作協力もあったのだろう。取材協力としては,堀本武功氏のお名前があったので,内容については氏が監修されたのだろう。
また,同じく取材協力として「海洋政策研究財団」の名前もあった。どのような財団か私には分からないが,やはりモーターボートか「日本財団」,あるいは防衛省と関係がある団体であろう。この辺も考慮しなければならないが,この番組が力作であることはたしかだ。
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番組によれば,インドは明確な国家戦略の下に軍を急拡大し,装備のハイテク化を進めている。インド洋防衛のための海軍増強(空母,戦艦など),最先端技術取得のための空軍近代化(新鋭戦闘機大量購入),周辺諸国との関係強化のための派遣軍人訓練,資源確保のためのPKO派遣(リベリア,スーダン,コンゴ,コートジボワール)など。
こうしたインドの軍事増強は,番組によれば,中国の進出を牽制しインド国益を守ることを基本的な戦略目標にしている。このことが,つまりアジア・アフリカはいまや印中の覇権争いの場となりつつあるという警告が,この番組の隠されたねらいのようだ。
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たしかに,この番組が警告するように,21世紀は印中の時代であろう。日本は再び極東の小国に没落する。では,印中のどちらが覇権を握るか? これは難しいところだが,潜在成長力としては,インドの方が大きいのではないか?
(1)人口
中国は強制的一人っ子政策で人口構成が歪となり,やがて高齢化社会になる。これに対し,インド人口は増加し続け,いずれ世界最大となるだろう。
(2)民主主義
中国は共産党独裁であり,やがて成長の阻害要因となる。修正は容易ではない。これに対し,インドは「世界最大の民主主義」であり,社会の活力ははるかに大きい。
(3)多民族・多文化
中国も多民族・多文化ではあるが,共産党独裁。これに対し,インドは世界最大の多民族・多文化社会であり,社会的混乱がある反面,それらを調整してきた豊富な経験もある。これはグローバル化時代には大きな強みとなる。
(4)世界性と英語
英帝国支配の置きみやげとしての世界性と英語。これは大きい。インド人は,英帝国のグローバル性を継承し,世界中どこでも自在に英語で議論し商売ができる。普遍言語としての英語と日常言語とのバイリンガル社会の強味。
――以上のようにみてくると,従来,インドの後進性の原因とされてきたものが,急速なグローバル化により,インド発展の原動力になり始めた。すんなりと一直線にいくはずもないが,インドの可能性が極めて大きいことはたしかであろう。
■次回NHKスペシャル 2009年5月31日(日) 午後9時00分~9時49分
「インドの衝撃(第2回)世界最大の選挙戦 貧困層が国を動かす」 1/26/2009 オバマ大統領と国益と南アジア谷川昌幸(C)
1.佐藤優氏のオバマ評
佐藤優氏がサンデープロジェクト(1/25)に出演し,鋭く,恐ろしいオバマ分析をしていた。 ・オバマは「戦う平和主義者」で,ブッシュ前大統領と同程度に「戦闘的」だ。
・オバマは,タリバン穏健派との妥協がならなければ,力でタリバンを叩きつぶす。 ・オバマは,対アフガン作戦にインドを巻き込もうとしている。 これは,先の私のオバマ評価とほぼ同じだ。(オバマ大統領の新軍国主義と朝日の海自派遣扇動)
オバマ大統領は,国家理性に従う現実主義者であり,今後は「人権」や「平和」や「民主主義」がアメリカ「国益」のために合理的に利用されることになる。
理想主義者のブッシュ前大統領は,現実を見ず観念的に単独でアメリカ国益を実現しようとしたが,オバマ大統領はそんな不合理なことはせず,日本などを引き込み,最大限他国に協力させ,アメリカ国益を実現しようとする。必要なら,戦争も躊躇しない。佐藤氏が言うように,オバマ大統領は「戦闘的」であり,「戦う平和主義者」なのだ。
2.大統領就任演説と国家理性
(1)悪いのは「テロリスト」か? オバマ大統領の就任演説は,秀才ゴーストライターが頭をひねった割には,非米世界から見ると,できがよくない。とくにひどいのが,次の部分(以下,引用はyomiuri online,1月21日より)。 「我々は、我々の生き方について謝らないし、それを守ることを躊躇しない。テロを引き起こし、罪のない人を殺すことで目的の推進を図る人々よ、我々は言う。我々の精神は今、より強固であり、壊すことはできないと。あなたたちは、我々より長く生きることはできない。我々は、あなたたちを打ち破るだろう。We will not apologize for our way of life, nor will we waver in its defense, and for those who seek to advance their aims by inducing terror and slaughtering innocents, we say to you now that our spirit is stronger and cannot be broken; you cannot outlast us, and we will defeat you.」
「紛争の種をまいたり、自分たちの社会の問題を西洋のせいにしたりする世界各地の指導者よ、国民は、あなた方が何を築けるかで判断するのであって、何を破壊するかで判断するのではないことを知るべきだ。腐敗や欺き、さらには異議を唱える人を黙らせることで、権力にしがみつく者よ、あなたたちは、歴史の誤った側にいる。To those leaders around the globe who seek to sow conflict, or blame their society's ills on the West - know that your people will judge you on what you can build, not what you destroy. To those who cling to power through corruption and deceit and the silencing of dissent, know that you are on the wrong side of history.」
ぬけぬけと,よく言うよ(!)という感じ。途上国にそのような「指導者」がいることは事実だが,しかし,長年にわたって植民地支配し,いままたグローバル資本主義で途上国を搾取し「紛争の種」を蒔き,育ててきたのは,米国をはじめ先進諸国ではないか。
「腐敗や謀略 corruption and deceit」,「反対者の抑圧silencing of dissent」に加担し,あるいは時には自ら策謀し,不当な利益を得てきたのは,先進国自身ではないか。
あるいは,結婚祝賀会場や集会場を爆撃し「罪もない人々を虐殺slaughtering innocents」し,平然と「誤爆でした」と言い放ち,恬として恥じないのは,アメリカ軍ではないか?
にもかかわらず,オバマ大統領は「我々の生き方について謝らないWe will not apologize for our way of life」と断言し,「あなたたちを打ち破るdefeat you」と宣言している。途上国に貧困と汚職・腐敗と独裁と,そしてテロをもたらしたのは,いったい誰なのだ!
(2)アメリカは被害者か?
オバマ大統領の演説を読むと,アメリカがまるで被害者のように思えてくる。彼自身,こういっている。 「我々が危機の最中にいることは、現在では明白だ。我々の国家は、暴力と憎悪の広範なネットワークを相手に戦争を行っている。That we are in the midst of crisis is now well understood. Our nation is at war, against a far-reaching network of violence and hatred.」
世界最強国家たるアメリカが「暴力と憎悪」の被害者だなどと堂々といわれると,つい本当かなぁ~と思ってしまうが,これは真っ赤なウソだ。小さなウソはすぐ分かる。しかし,大きなウソになると,多くの人がコロッと騙されてしまう。
じじつ,世界中の人々がアメリカの怪しげな金融錬金術に騙され,いまや世界は大恐慌の瀬戸際にある。アメリカはいまの経済危機を引き起こした加害者だ。同じく,世界の政治危機についても,アメリカの責任は大きい。オバマ大統領は,それを隠し,あたかも被害者であるかのように見せようとしている。オバマ大統領の政治的トリックに騙されてはならない。
(3)国家理性の呪縛
オバマ大統領は,その出自からしても,またその明晰な頭脳からしても,非米世界に対しアメリカが加害者であること,そして自分たちがテロの種をまき育ててきたことは,よく分かっているはずだ。 にもかかわらず,彼が大統領就任演説でそのことに全く言及しないのは,世界最強国家の大統領としては,国家理性の命令に服さざるをえないからだ。
非米世界の人々は,いまこそ連帯し,もはや「国家理性」の維持は難しいことを倦むことなくオバマ大統領に訴えていかなければならない。オバマ大統領なら,世界が変わりつつあることをきっと理解してくれるはずだ。
もしオバマ大統領が,近代の宿痾,国家理性の呪縛からアメリカを解放する方向に向かって一歩前進するなら,彼はリンカーン大統領と並び称されるほどの偉大な大統領になるであろう。
3.オバマ大統領のインド利用
しかし,それは先のこと。目下,オバマ大統領は強力な国家理性の呪縛下にあり,しかも危険なことに,ポピュリズムの上げ潮に乗って大統領に当選した。オバマ大統領は,アメリカの偉大のために,成功を求めざるをえないのだ。 それは,ずばり,アフガンでの成功だ。タリバン穏健派の取り込みに成功すればよいが,もしそうならなければ,佐藤優氏がいうように,アメリカは本格的に軍事介入する。3万人ではすまない。そして,このシナリオに絶対必要なのが,インドの協力だ。
アメリカは,すでにインドを特別扱いしている。インドは「核不拡散条約(NPT)」非加盟であるにもかかわらず,アメリカは「米印原子力協力協定」(2007)を締結し,核技術・核燃料などの協力を進めようとしている。オバマ大統領は,この米印関係をさらに前進させるだろう。 就任演説でも,オバマ大統領はアメリカが「ヒンズー教徒」の国でもあることを宣言した。仏教徒は入っていない。インド,とくにそのヒンズー教徒を意識していることは明白だ。こうした対印接近が,アフガンやパキスタンのイスラム教徒を刺激することはいうまでもない。
オバマ大統領は,22日の国務省演説でも,パキスタン・アフガニスタン国境付近の重要性を強調し,「われわれだけでは問題を解決できない」と述べた。そして,AFPによれば,オバマ大統領はこういった――アメリカはNATO諸国およびこの地域の他の国々,すなわち中央アジア諸国と,パキスタンの最大のライバルであるインドの協力を仰ぐことになる(AFP, Jan.22)。
もしアメリカ政府がこのような形で南アジアに介入してくると,紛争がさらに複雑化し,制御できなくなる恐れがある。そして,そうなれば,ネパールも必然的に紛争に巻き込まれる。
ネパールの立場からも,オバマ大統領の対南アジア政策は,要注意なのである。
11/4/2008 マオイスト軍関係者の中国接近:巨象の尾を踏むか?谷川昌幸(C) カンチプル(11/2)によれば,中国はマオイスト軍高官たちに軍事訓練をし,他の幹部たちとも関係を深めているという。 10月28-29日,RB.タパ国防大臣,KB.マハラ情報大臣,NB.チャンド幹部,J.ガルティ幹部らは,中国大使館員を伴い自家用車1台,軍用車2台で,タトパニからカサに入った。中国大使館軍事部のリー氏も別の車で行き,彼らと現地で合流した。彼らは「友好橋」を渡り,チベット側へ入ったらしい。(中国は,チベット鉄道を,このルートでネパールにまで延伸することを計画している。) マオイスト大臣・幹部たちは,ティハール休日の私的旅行と説明しているが,誰が見ても怪しい,きな臭い旅だ。 特に,印米から見ると,これは許し難い軍事的冒険であろう。パンチャヤト政府のように,巨象の尾を踏むことになるかもしれない。 (注)グーグル地図はこの付近は空白になっている。以前はバッチリ写っていたはずだが,どこかの圧力で消されたのかな? それともアクセス方法の間違いか? 6/5/2008 中国属国化への警鐘:朝日記事谷川昌幸(C)
今日(6月5日)も朝日新聞に大きなネパール記事が出ている。連載「奔流中国21」の一つ。執筆は武石英史郎記者で,チベット国境近くのコダリまで行き,レポートしている。
それによると,いまでもコダリには中国の制服・私服の警官,公安関係者がいて,警戒している。武石記者も怪しまれ,連行されそうになった。カトマンズでも,UNHCR「チベット難民受け入れセンター」が捜索され,難民が中国に引き渡されたという。
武石記者の文章はバランスがとれており,朝日らしい堅実な記事だ。さすが本物のジャーナリストは違う。
それにしても,ネパールの対中関係は惨めだ。最低限の警察権や難民保護義務ですら放棄している。主権放棄といってよい。マオイスト政権になれば,同じ毛沢東主義,さらに対中従属が進むだろう。チベット系ばかりか,反政府少数派にとっても厳しい状況になりそうだ。
【追加】 これは杞憂ではない。今日,KB.マハラ情報大臣(マオイスト)が1週間の訪中から帰国した。訪中の主目的は,中国共産党とネパール共産党(毛派)との関係緊密化。その成果をふまえて,マハラ大臣は,中国側に,こう確約した。
「チベット問題に対する中国政府の立場をネパール共産党(毛派)は強く支持する。」
「どのような勢力によるネパール内での反中国活動をも阻止する。」
(nepalnews.com, 3, 5 Jun)
【補足】 公平のため補足すると,CIAやRAW,あるいはインド警察がネパール領内で我が物顔に振る舞っていた(いる?)ことも事実だ。
3/27/2008 チベット弾圧に加担するネパール「人民」谷川昌幸(C) 1.チベット系住民弾圧の違法性 世界人権宣言 ネパール暫定憲法 2.マオイスト系「準官報」で中国支持示唆 御用新聞Rising Nepal(Gorkha Patra)は,いまや「マオイスト準機関誌」とさえウワサされている。そのライジング・ネパールは,中国大使館声明をそのまま掲載し,弾圧協力の姿勢を暗示した。これは,全文掲載に値する。「準官報」だから,著作権はないだろう。 Tibet govt condemns criminal activities [Rising Nepal,2008-3-17] Kathmandu, Mar. 16: The government of the Tibet Autonomous Region of China (TAR) has condemned the violent activities being perpetrated by a small criminal group in Lhasa and has warned that it would take stern action if such violent activities are not stopped immediately. A small group of people in Lhasa have started violence involving beating, smashing, looting and burning which has disrupted the public order and jeopardised people's lives and property, a press release issued by the Embassy of China in Kathmandu said. "There are enough evidences to prove that the sabotage was organised, premeditated and masterminded by the Dalai clique and such action has aroused locals' dissatisfaction and been condemned by peoples in Tibet," the press statement said. "The concerned departments of TAR are legally taking effective measures to properly handle this riot. We are fully confident of maintaining the social stability in Tibet and ensuring the safety of peoples' lives and property," the statement reads. The smallest group of people's attempt to destroy Tibet's stability and harmony has no foundation and is doomed to fail, the statement said. これもマオイストの検閲を受けているとすれば,彼らはこのような中国政府の政策を暗に支持しているということになる。これこそが,マイノリティの友,民族自治の旗手ネパール共産党マオイストの,チベット弾圧に対する態度なのだ。(マオイスト,中国のチベット弾圧支持か? 参照) ちなみに,ネパール政府がエベレスト登山を禁止した本当の理由は,エベレスト山頂にチベット旗が立つのを恐れたからだ(と思う)。世界最高峰エベレストの山頂には,中国=ネパール両国「人民」の赤旗が立つべきなのだ。 3.沈黙か寡黙の諸政党 それでも,UMLは声明を出し,多少はしゃべったようだ。 コングレスもどこかで何か言っているかもしれないが,今のところ見つからない。 4.マイノリティを守らない「人民」 権力が「人民」のものになれば,「人民」ではないマイノリティの自由や権利は守られない。マイノリティ弾圧は,これまで以上に厳しく容赦ないものになるであろう。マイノリティは,「人民」への同化か,国外脱出の準備をするのが賢明であろう。 3/23/2008 チベット難民を取り締まれ-「人民評論」谷川昌幸(C)
チベットは,古来,ネパールにとっては取扱注意の難問であった。今回のチベット叛乱についても,ネパールの政府や諸政党は対応に苦慮しているようだ。その事情は,たとえばもし日本で台湾独立運動が拡大した場合,日本がどのような態度を取るかを考えると,すぐ分かる。ネパールにとって,チベット問題は,それとは比較にならないほど身近で深刻な問題なのだ。
国外の反政府運動については,ネパール自身も,インド政府に対しマオイストの領土利用を止めさせよと幾度も要求してきたし,マオイスト+7(6)党政府もマデシのインド領土利用に抗議してきた。
このように,どの国家にとっても,外国反体制派の国内活動への対応は難しいが,とくにネパールのように国家権力が弱体な国にとっては,それは深刻な政治問題となる。チベット弾圧抗議活動を容認すれば,中国から圧力をかけられ,内政干渉を招くが,そうなると対抗上,インドも介入する。泥沼だ。
ネパール政府が中国から繰り返し圧力をかけられていることは,BBC(20 Mar)などが伝えるとおりだ。次の「人民評論(People's Review)」の記事「チベット難民はネパール領土を反中国に利用している」をみると,そのすさまじさがよく分かる。「外交通信員」名の記事は,こう述べている。
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ネパール暫定憲法は国土を反友好国活動に利用させないと定めている。ところが,チベット難民はそれを無視し,いま大ぴらに反中国活動をしている。 ネパールにおける中国の存在は巨大だ。ところが,親インド指導者たちはこれを考慮せず,チベット難民の政治活動を許している。
周知のように,近年,ネパールはチベット難民の政治活動の中心になっている。政権にある先見性のない政治家たちは,インドべったりとなり中国を怒らせている。
チベット人を扇動しているのは,中国オリンピックの失敗を画策している西側だ。かつて西側メディアは中国にはオリンピック開催は無理だといっていたが,思惑に反しオリンピックが実現しそうにになってきたので,今度は北京の公害を非難したが,これにも中国はうまく対応した。
そこで,西側メディアが目を向けたのが人権と民主主義だが,これについても何の問題も無かったので,結局,チベット難民の扇動を始めたのだ。
ネパールは,チベットと台湾が中国固有の領土であることを固く信じている。
チベット難民は,人道を根拠に,西側とインドの支援を受けネパールに居住しているが,もし政治活動をしたいのなら,直ちに国外退去すべきだ。ネパール領土を友好国攻撃に利用させないというのが,ネパ-ル政府の外交原則だからだ。
「民主」政府は,チベット難民を厳しく取り締まるべきだ。もし,この状態が続けば,これまで慎重に対応してきた中国も,国家統合を守るためネパールに介入せざるをえないだろう。(People's Review, 20 Mar. 2008)
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国家の立場からすると,アメリカや日本ですら出来ないことを,弱小国ネパールに要求するな,ということ,つまりネパールのチベット難民取り締まりを非難するなら,自国政府に対し,断交なりオリンピック・ボイコットを要求せよ,ということだろう。それほど,ネパールにとって,チベット難民問題は難しい。
しかし,これは国家や政府の立場。私たちは,一方では,世界社会の人権や民主主義の立場から,この問題について発言できるし,またすべきだ。国家の立場がどうであれ,チベット人ほどの大民族が独立かそれに近い自治をえられないのは,不当だ。
チベットの出来事は,何よりもまず自由に報道され,世界の人々の目にさらされるべきだ。もし公開に耐えられないようなものであれば,国家・政府の立場がどうであれ,それは世界世論(世論法廷)により裁かれ,維持できなくなるはずだ。チベットについては,まず見せよ! と要求すべきだろう。
それと,ネパールの6党やマオイストに対しては,これまで民族自治,地域自治を錦の御旗にしてきたのだから,まさにその原理そのものが問われているチベット叛乱についても,逃げることなく明確な態度表明をせよと要求してしかるべきだろう。
10/28/2007 中ネ道路谷川昌幸(C)
新華社によると,中国は,中国-ネパール道路のチベット側を2010年までに無積雪舗装道路にするという。
ネパールは,かつてのような大国主義的印中イデオロギー戦争の場から新自由主義的市場競争の場に大きく転換する。印中どちらがネパール市場を制するか? といっても,ネパール市場なんか,たかがしれている。となると,もめそうなのは「独立国」ネパールを媒介とした印中貿易だろう。
南北両大国からの市場化攻勢でネパール社会が急激に変えられる一方,国際関係にも新たな難問が生まれる。他国のことながら,これからが思いやられる。
(地図)中国-ネパール道路 拡大地図を表示
(写真)この道路を中国商品満載トラックが行き交うようになるのか?
9/25/2007 UNMINと日中の存在感格差谷川昌幸(C)
1.日本の存在感なし 9月23日(日),ニューバネスワルのUNMIN本部へ行った。あれ? 西側職員はみなお休み。ここはネパール,西洋休日に合わせる必要はないのにね。といったことを,一見恐ろしそうな警備隊長とだべってきた。隊長氏によると,私はチェットリに似ているそうだ。こんな弱い兵隊ではすぐ負けるのにね。UNMINは高給だし,仕事は楽だし,天国だね。日本人はいるの? と聞くと,いるらしいけれで知らないね,といっていた。存在感まるで無し。 2.中国の圧倒的存在感 UNMIN本部は不思議なところにある。中国援助のばかデカイ国際催事場の右半分と別棟をUNMIN本部が使用している。中国の国威発揚施設だから,写真のようにUNMINはまるで中国の出先機関のよう。中国の圧倒的な存在感。勝負あり,といったところだ。 3.国連官僚主義 翌24日,UNMIN本部に行き,内部を見てきた。これはご立派! こんな御殿で「平和構築」出来るなんて幸せだ。 広報部に行きUNMIN活動に関する報告書か何か無いかと聞くと,何も無いという。最高紙質の広報紙とビラ数枚だけ。それはないだろう! 世界中から金を集め,こんな5星ホテルのようなところで仕事をしていて,一般向けの資料はない。国連大学もそうだが,国際機関はやたら豪華で庶民には開かれていない。国際官僚主義が進行しているのだろう。 4.日本の不思議な存在感 UNMIN本部への出入りを観察していると,見た限りでは,西洋人と現地採用ネパール人のみ。西洋人の相当数はNGO関係者のようだ。自由に出入りしている。ここでは日本の気配はつゆ感じられない。これからは日本人も遠慮せずヒマラヤ観光のついでにUNMIN見学をするとよい。自分たちのカネがどう使われているか,よく分かる。 これと対照的なのが外の駐車場。ピカピカのランドクルーザー約40台,小型バス約20台,作業車・緊急車が十数台。「UN」の紋所がまぶしい。そして,見よ! ランドクルーザーの大半は,トヨタ車だ。圧倒的な存在感! 日本ナショナリズム・大国主義感情をくすぐられ,大いに満足。うっぷんが晴れた。トヨタさん,お国のために,ありがとう。 5.愛国者横断幕 この中国付属のようなUNMIN本部を出ると,やはりいました,例のラクシマン・シン氏。ヒンズー教祈願の愛国的巨大横幕が国際催事場の前に張ってある。中国とUNMINを借景としたよい構図だ。前回の世界貿易センター前といい,センスがいいなぁ。 6.物価高にあえぐ 愛国者横断幕の向かいの庶民食堂に昼食に入ったら,これは高い。金がないので一番安そうなスープだけ頼んだが,それでも消費税込みで70ルピー弱。パンも付かず水のような貧相なスープ。貧乏人は惨めだなぁ。国連インフレに違いない。これまで外人租界タメルだから高いと思っていたが,そうではない。庶民物価も,天井知らずのネパール株高騰に負けず劣らず高騰しているのだ。 ガソリン1リットルが100~150ルピー(200~300円)。それでもスズキ・タクシーは走り回り,その雲霞のごときスズキ車を蹴散らしピカピカUN高級車も平和な街をわがもの顔に走り回る。いったいどうなっているのだ? 7.排ガス格差カースト制 カトマンズ盆地には,おびただしい車の排ガスと糞尿細菌混在土埃が混ざったスモッグがよどんでいる。貧乏人歩行者や路上業者はそれをたっぷり吸い込み,バス乗客や小金持ちタクシー乗客も糞尿細菌混在排ガスを吸い吸い移動する。ところが,エアコン付き燃料多消費UN高級車は窓を閉め,平然と走り回る。排ガス格差,排ガス・カースト制。 先進国が途上国とかかわる場合,自国の生活基準,生活水準をある程度持ち込まざるを得ない事情は分かる。私自身,ネパール庶民と同じ生活は無理だ。それはそうだが,そこにはやはり遠慮あるいは節度が求められる。それが出来ないなら,途上国には来るべきではない。 もし私がネパール庶民なら,窓を閉め切り,ふんぞり返っているUN高級車にクラクションを鳴らされたら,ピカピカに磨かれた車体を思い切り蹴飛ばしてやるに違いない。エアコンくらい外し,庶民と同じ糞尿細菌入り排ガス空気を吸うべきだろう。 8.新しいカースト制 庶民から見ると,国連も先進諸国も,古いカースト制は自分たちにとって都合が悪いので,それを破壊し,排ガス・カースト制に象徴されるような新しいカースト制を作ろうとしているように見える。ネパールにおいて,国連ファミリーに入ることは,最上位カーストになることだ。そう見られている。 こんなことをしていると,庶民の間に怨念が静かに沈殿し過激原理主義を生み出すのではないか? ラクシマン・シン氏がそうかどうか分からないが,そんな気配は感じる。 そして,排ガス・カースト制において圧倒的な存在感を示しているのは日本だ, (上位カースト)エアコン付きランドクルーザー。かつてはパジェロ,いまはトヨタ (中位カースト)スズキ・タクシー,バイク(ホンダ,スズキ) (下位カースト)バス,トラック(タタ,トヨタ,日産) (カースト外)排ガス排出移動手段を利用しない(出来ない)人々 日本は,こんなところで存在感を示している。嬉しいような嬉しくないような。 (写真1)国際催事場前の愛国横断幕 (写真2)国際催事場と中国祭 (写真3)UNMIN駐車場 (写真4)糞尿細菌混入排ガスまみれのクマリ様(インドラ祭) 9/17/2007 アメリカン・クラブの怪谷川昌幸(C)
王宮前,カトマンズのど真ん中にあるアメリカン・クラブはどうも怪しい。写真を撮ると逮捕されるので,遠景で紹介しよう。 1.文部省前(タメル入り口)から(写真1) アメリカン・クラブは王宮の南に接した広大な施設で,高い塀に囲まれ,小銃を構えた多数の武装警官(兵隊といってもよい)が24時間警戒している。平和ボケ(誉め言葉)の日本人が気づかず写真を撮ると,即逮捕。 日本でいえば,皇居前の広大な土地がアメリカに占領され,治外法権になり,お上りさんが記念写真を撮ったら即逮捕されるようなもの。その異常さ,国辱を考えれば,これがいかに傲慢な植民地主義的行為か一目瞭然だ。 なぜマオイストはリキシャを攻撃し,こんな売国的施設を攻撃しないのか? 2.選管前から(写真2) いまやネパール最大の産業,選挙管理委員会。この選管ビルもすごい。たかが選挙のために,こんな豪華巨大ビル,パジェロ使い放題がどうして許されるのか? 警戒がいまほど厳しくなかった数年前,こっそり潜り込み探索したことがあるが,まぁ,暇つぶしが業務で,偉いさんの高級車ばかりだった。いまは警備兵が小銃で脅すので中には入れない。UNMINのおかげで,パジェロも激増したことだろう。 写真の手前,木の陰になっているのが旧英国文化会館。同じアングロサクソンでも,なぜこれほど品格が違うのだろう。英国文化会館は上品な植民地主義の見本で,建物も中の設備,サービスも文化の薫り高いものだった。私はいつもここを愛用していた。この廃屋ですら,ターナーの落日のような品格を感じさせる。 これに反し,このアメリカン・クラブの下品さはどうだ。文化のかけらもない。別の場所にアメリカン・センターもあるが,これも品格無し。利用者も少ない。スパイでもやっているのではないか? 軍事力がなければ,こんな国に威厳を感じる人はいないだろう。国力衰退,撤退後も文化の薫りを残す英国と雲泥の差だ。 高いアンテナも立っている。アメリカン・クラブといっても,イザとなれば,ここに米軍が進駐することは明白だ。これは軍事施設と見た方がよい。だから,写真1枚で逮捕するのだ。 3.王宮正面から(写真3) 王宮はいま,ひっそりとしている。右上奥が外人租界タメル。不良外人の一人の私もイザとなれば米軍に守ってもらうかもしれないので,あまり悪口は言えないが,いくら何でも,こんな施設を平然とつくる米国の神経は,信じがたい。ネパール人の誇りなど,歯牙にもかけていない。 もうこれからは,遠景からでも,写真は撮れないだろう。監視カメラで記録され,要注意外人となっている可能性があるからだ。 グーグルで見たら丸見えなのに,こんなことをしているのは,威圧効果を狙っているからだ。「ここに世界最強,米国がいるゾ!」 この脅しが,このこけおどし施設の目的だろう。全くもって下品だ。こんなことをしていると,優雅に衰退は出来ない。もう少し,文化的に上品にやって欲しい。 3/12/2007 紅白テロリスト合戦と自衛隊派遣谷川昌幸(C) プラチャンダ議長がポカラで3月8日,王党派の米人殺害計画があると警告した。モリアティ大使は,「証拠を出せ」とご立腹だが,王族殺害事件の国,和平阻止テロくらいあっても不思議ではない。 真偽は別にして,この議論は錯綜している。米国にテロリスト指定されているマオイスト赤色テロリストが,王党派白色テロリストを,テロリスト国家と非難されている国々から「国家テロリスト」と呼ばれているアメリカにテロリストとして売りつける。まさに紅白入り乱れてのテロリスト合戦。 そこに自衛隊が参入する。米国ですら白色テロの対象にされかねないのに,報復攻撃も出来ない日本がどうして攻撃の対象とならないのか? 和平ぶち壊しには,安全パイの対日テロの方がはるかに合理的だ。 たとえ実行されなくても,「派兵国に報復する」というウワサが立っただけで,在ネ日本人の心境は一変する。自衛隊派遣などという無謀な冒険は,止めた方がよい。 * "Moriarty stunned by Prachanda's assertions," Nepalnews.com, Mar.10; "Royalist plot to kill US officials will be clarified soon: Prachanda," KOL, Mar.10; "US embassy "deeply concerned" over Prachanda's statement," Nepalnews.com, Mar.9 1/24/2007 自衛隊派遣,皇太子歓迎以上の愚策谷川昌幸(C) 政府がついに自衛隊ネパール派兵の方針を固めた。日本皇室を政治的に利用したパラス皇太子大歓迎につづく,愚策だ。 これで,日本への信用は一気に失墜する。中国も敏感地帯への自衛隊派兵に神経をとがらせ,何らかの対抗措置をとるかもしれない。 なぜこんなことをするのだ。日本がネパールの平和のためにできること,やるべきことは他にたくさんあるのに,よりにもよって軍隊を送るとは! 日本のネパール関係者は,こぞって反対運動に立ち上がるべきだ。軍隊をネパールに送ってはならない。 このパラス皇太子歓迎の失策,失態を見よ。自衛隊派兵はこれら以上の愚策だ。 (関連記事) 8/29/2006 チベット石油とネパール谷川昌幸(C) Bhaskar Koirala氏が,ネパール・中国関係の強化を訴えている。ビレンドラ国王の「平和地帯(Zone of Peace)」を再評価し,外交的立場を強化し,国益を増進せよということらしい。この主張が以前と少し違うのは,実利の裏付けがありそうな点だ。 1.チベット石油 「ガスや石油類が安く買えるようになったら,すでにカネ亡者になっている(already cash-strapped)ネパール人が,こんなバカ高い代金を払い続けるわけがない。」 かつてヒマラヤは海底だったから,チベットから石油が出ても不思議ではない。ネパールからは出そうにないのが残念だが。 2.交易中継基地・観光開発 すでに道路建設が進み,鉄道も「青海チベット鉄道」が完成,これはネパール国境まで延伸の予定。物流だけでなく,観光面でも将来性は大だ。 チベット鉄道は連日満員御礼。これがネパール国境まで延び,ネパール側とうまく結びつけば,観光目玉になる。 3.光ファイバー 4.政治より商売 これはネパールにとってチャンス。政治を生業とするブラーマン,チェットリを養うだけの人民戦争,ゴムタイヤ焼きはほどほどにして,早く商売に目を向けた方がよい。 観光資源もIT技術も潜在的に豊富なのだから,その気になれば,第二のシンガポール,香港になるのも夢ではあるまい。 * Bhaskar Koirala, "The Promise Inherent in Nepal-China Relations," Nepalnews.com, Aug.28. 7/30/2006 対ネ外交の日中比較谷川昌幸(C) 中国と日本の外交団が7月末,あいついでネパールを訪れた。 中国は武外務次官以下10名。1億RMB(16億3千万円)の援助の引き換えに,コイララ首相とオーリ外相から,一つの中国,台湾独立反対,ネパール国土を反中国活動に使用させない,との言質をバッチリ取り,意気揚々と帰国した。「ネ中マオイスト共同宣言」はなかったが,大成功といってよい。 塩崎外務副大臣一行は,シンガポール,インド訪問のついでに,ちょっとカトマンズに立ち寄り,810万ドル(9億2千万円)の手みやげを渡し,それで,さて何を得たのだろうか? かつて森首相は,歓迎行事中に居眠りし,一瞬にして日本嫌いを激増させた。今回は,まさかそんなことはなかったであろうが,アメリカの提灯持ち,との印象は拭いきれなかったのではないだろうか。 * 「人民日報」7月29日;eKantipur, Jul.29 7/28/2006 人間の安全保障の危険性谷川昌幸(C) 民主主義と同じく,「人間の安全保障」や「平和構築」も危険だ。 それらは,非軍事的支援が軍事的介入とセットになっており,必要な場合には軍隊を使うことが当然の前提になっている。ここを見誤ると,市民やNGOの善意の平和貢献は新帝国主義に取り込まれ,いいように利用されるだけとなる。 日本政府が「人間の安全保障」を日本外交の基本方針の一つにしたのは,おそらく自衛隊の海外派兵(=派遣)にとって,これが絶好の大義名分だと思われたからであろう。 防衛庁が防衛省ないし国防省に格上げされ,自衛隊も晴れて国防軍と改称され,海外派兵(派遣)は日本国防軍の本体業務(本来の仕事)となる。 「人間の安全保障」も「平和構築」も,国家(政府)に任せておくと,特に日本にとっては,危険きわまりないものとなる。国民監視が必要だ。 7/25/2006 中国外交使節団,ネパールへ谷川昌幸(C) 人民共和国・中国の外交使節団(10人)が,7月27日,人民共和国を目指すネパールにやってくる。和平過程に関与する目論見だ。 絶妙のタイミング。うまいなぁ! もしこれで,ネパール・中国「マオイスト共同宣言」でも発表できるなら,中国外交は文句なしに世界一。 * eKantipur, Jul.24 2/15/2006 ビルマと中印とネパール谷川昌幸: 朝日新聞(2/15)がビルマ(ミャンマー)と中印の関係に関する面白い記事を掲載している。 ▼軍政 ▼中印の支援合戦 ▼国王政府のモデル 経済的にはビルマほど重要ではなくとも,地政学的にはネパールはアジアにおいてますます重要となってきている。ビルマのような露骨な軍政であっても,中印の権力バランスをうまくとれば,永続しうる。ネパール国王にも,チャンスはある。 ▼押したり引いたり 最高裁はいうまでもなくメディアも国王政府の統制下にあるとすれば,これらはむしろ国王政府の余裕の現れではないか? 選挙をやったのだから,少し手綱をゆるめ,世間をホッとさせ,1年もたせ,そして次の選挙のときまた締め付ける,そんな高等戦術のような気がする。
国際的には中印のバランス,国内的には政党とマオイストのバランスをとりつつ,押したり引いたり。王家の政治は年季が入っている。 2/12/2006 日本非難声明谷川昌幸: ネパール外務省は,市選挙非難声明を出した日本政府と米英印政府を激しく非難した。日本が名指しで非難されるのは,初めてではないか? ▼日本の二枚舌 毒舌ギリ副首相は,もっとストレートに,市選挙ではなく,アフガン・イラク選挙こそが「空虚な選挙」だ,と反撃する。昨日の私の議論と,そっくり同じだ。 ▼日本の負け ▼不打不識 しかし,今回の非難の応酬は,日ネ関係が成熟へ向けて一歩前進したことを意味する。 皇族や会長が記念写真を撮って促進できるような友好関係は,たかがしれている。不打不識。畏敬すべき中国のことわざに言うとおりだ。 ▼日本の戦争責任 日本は,対米配慮,中東原油のために,アメリカの選挙原理主義に加担してしまった。 これを自己批判しなければ,ネパール地方選挙非難は,説得力を持たない。日本政府は,自己の誤りに気づかせてくれたギリ副首相に感謝すべきだろう。 * ekantipur, nepalnews.com and Rising Nepal,Feb.11. 2/4/2006 英国紳士の冷徹国益外交谷川昌幸: ネパールと最も歴史的関係が深い西側の国,イギリスが,このところ目立った動きをしていない。大使館HPを見ても,ほぼ沈黙。世界に冠たる外交先進国イギリスは,いま何をしているのだろうか? ▼世界最強自律人,英国紳士 たしかリースマンだったと思うが,ジャングルに一人取り残されても,平然と,自己を失うことなく生きられるのが,イギリス人。ジャングルだろうが,ロビンクルーソーのように無人島だろうが,神の下,泰然自若,紳士たりうるのが,イギリス人だ。さみしがりやの日本人には,とても真似が出来ない。 ▼紳士の冷徹 ▼現代版人買い,グルカ兵 ポカラ・グルカ兵センターでは,毎年370人が採用され,230人が英軍へ,140人がシンガポール警察軍グルカ隊に配属される。現在,英軍グルカ兵だけでも約3600人。 ▼勝ち組としてのグルカ兵 ・給与(年)=240~800万円+諸手当 ・福利厚生=結婚,教育からスポーツまで万全 ・年金,本人(20年勤務,月額)=3~5万ルピー ・年金,家族(月額)=1~8万ルピー こんな好条件であれば,希望者殺到は当然だ。その結果,選抜は厳しく,超優秀者のみが採用される。そして,最も危険で過酷な部署に配属され,勇猛と称えられ,戦死でもしようものなら,栄誉ある勲章を授与される。 ▼貧困と内戦は英国国益 ネパールの貧困→グルカ兵給与の魅力 ネパールの内戦→戦争慣れ,自主的戦闘訓練 →戦闘慣れした優秀青年の採用 →グルカ兵として英国に奉仕 →退役→国軍指導/人民解放軍指導 →内戦激化・高度化 →現代戦,ゲリラ戦向きのさらに優秀なグルカ兵の採用 → ・・・・ イギリスにとって,まさに理想的。英国紳士は,パイプをくゆらせ,平然と,ネパールの貧困と内戦から英国国益を極大化する方策を考え,実行している。 ▼紳士の外交ゲーム そして,アメリカ人や日本人のように,みっともなく感情的にわめき散らしたりせず,本心を本場仕立てのスーツで包み隠し,パイプ片手に,紳士のゲームを続けていく。 1/27/2006 国王支援2大国,中国と日本谷川昌幸: ネパール国王を強力に支援しているアジアの国家は,いまや中国と日本の2大国となった。パキスタンは,アメリカの対テロ対策援助でトーンダウン。 ▼中国の外交的支援 中国は,ネパールの現状をこのように構成し,この方向へと世論を導こうとしている。 国王は,この中国の強力な外交的支援がなければ,おそらくこれほど頑張れないだろう。イザというとき,中国が国王をどこまで支えるか,それは分からないが,軍事援助を小出しにしながら,「ひよっとしたら・・・・」と期待を持たせ,中国国益をとことん追求する。その外交は,さすが中国,アッパレだ。 ▼日本の神頼み支援 ▼本尊はビシュヌ化身 これに対し,ヒンズー教は,何でも飲み込む無限の包容力を持ち,天皇も神々の一人として容易に取り込みうる。つまり,偉大なビシュヌ神化身の苦境を救うため,東の端から1人の神がはせ参じた,ご本尊の応援にきた,といったところか。現人神天皇の応援はありがたいが,彼らにとっては,せいぜい神々の1人にすぎない。 ▼天皇の政治的利用 ビシュヌ神化身は,日本天皇を自分の神話体系の中に組み込むことにより,権威を高め,統治権力を強化できる。 もし私が国王側近で,王制危機に直面したら,躊躇せず,例の「ネパール皇太子夫妻=天皇家記念写真」や「皇太子=日ネ協会会長記念写真」をテレビ・新聞で大々的に宣伝し,大量に印刷してばらまく。すでに,ネパールでは天皇家はヒンズー教神話体系の中に組み込まれているので,国王攻撃を天皇攻撃と情緒的に結び付けるのは造作もない。 ▼神頼み外交の失敗 ▼多チャンネル民間外交に向けて * "Guerrilas gunned down in Nepal," "Nepali govt ready for dialogue with political parties: Minister," Chinaview, Jan26; "Over 3,000 file nomination paper for nepal's municipal polls," Chinaview, Jan27, 2006. 1/26/2006 中国が助け船谷川昌幸: 中国外務報道官コン・カン氏が,諸勢力の対話による問題解決を呼びかけた。外交上手の中国が,ここぞという時を見計らい,助け船を出したのだ。誰に? もちろん,国王に。 中国は,パンチャヤット時代から,原則として国王支持。国王の方も,これに応え,「毛沢東語録」や「下放」のまねをしていた。 1990年革命の主要原因の一つが,前々国王の中国過剰接近だったことも周知の事実だし,2005.2.1国王反革命(クーデター)の時も,中国は,国際世論など歯牙にもかけず,それを容認した。 中国は,国王の最大の理解者,最強の応援団だ。 その中国が,助け船を出した。国王もメンツが立つ。いや,多少かっこが悪くとも,この助け船に乗らないと,いよいよガチンコ勝負になる。結果は,確率の高い順から, (1)アナーキー,そして外国介入 国王は,メンツが立つうちに,90年憲法体制に戻った方がよい。 * Chinaview, Jan24; Kantipur, Jan25, 2006. |
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