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    10/27/2009

    派兵訓辞:菅副首相

    谷川昌幸(C)
    先日の岡田外相のPKO5原則見直し発言に続き,25日には菅副首相が海上自衛隊観艦式に出席し,「我が国の主体的判断と民主的統制の下,自衛隊が国際社会の平和と安定に貢献していくことを望む」と訓示した(朝日10/26)。
     
    海外派兵は,民主党「青年将校」の基本政策といってもよい。
     
    オバマ大統領は,理想主義的現実主義だが,民主党「青年将校」は現実主義偽装観念論である。
    10/21/2009

    アフガン派兵,断固反対

    谷川昌幸(C)
    自衛隊の扱いについては,以前にも書いたように,民主党の方が自民党よりもはるかに危険である。民主党は,朝日新聞などと共闘し,海外での「軍民協力」を積極的に推進するつもりなのだ。
     
    事実,北沢防衛大臣は,昨日,自衛隊のアフガン派遣を示唆し,さらに今日,ゲーツ国防長官との会談でも,その可能性に言及した。
     
    これは,オバマ政権の思うつぼだ。オバマ大統領は,核廃絶の理念を掲げつつ,通常兵器による覇権強化を図っている。しかもアメリカの犠牲は最小限にとどめる。それには,戦争のロボット化と諸外国の派兵増強が不可欠だ。したがって,オバマ政権としては,日本政府にも本格的な海外派兵を認めさせなければならないのである。
     
    ゲーツ国防長官は,会見から想像するにかなり高圧的な人物で,今回の交渉でも日本側を相当脅したのではないかと思われる。アメリカ側からすれば,沖縄で多少譲歩し,インド洋上給油中止を受け入れたとしても,自衛隊をアフガンに派兵させることが出来れば,戦略的には大成功なのだ。民主党は,朝日新聞にそそのかされ「軍民協力」に傾いているので,こわもてゲーツ国防長官にちょっと凄まれたら,おそらく抵抗は出来ないだろう。
     
    その点,自民党はさすが保守本流,自衛隊海外派兵については,慎重であった。インド洋上給油は,自衛隊アフガン派兵拒否のための免罪符だという自民党の言い分には,それなりの合理性がある。保守本来のずるがしこさ,大人の現実主義といってよい。
     
    民主党には,そのような政治的深慮はない。「軍民協力」で名誉の戦死がでることへの怖れなどまったく感じられない。このままでは,社民党がいくら抵抗しても,ごまめの歯ぎしり,自衛隊はアフガンに進軍することになるだろう。
     
    ▼追加(2009.10.22)
    岡田外相が,PKO5原則の見直しを外務省に指示した(朝日10/22)。5原則を緩和し,自衛隊派兵を促進するつもりだ。民主党は軍事的平和貢献をマニフェストでも謳っており,これは党是。自民党より恐ろしい。こんな党に参院選で勝利させてはならない。
     
    民主党マニフェスト
    54 世界の平和と繁栄を実現する
    ○わが国の主体的判断と民主的統制の下、国連の平和維持活動(PKO)等に参加して平和の構築に向けた役割を果たす。
    ○海上輸送の安全確保と国際貢献のため、適正な手続きで海賊対処のための活動を実施する。
     
    PKO5原則(毎日10/21)
    (1)停戦合意が成立
    (2)紛争当事者が日本の参加に同意
    (3)中立的立場を厳守
    (4)基本方針が満たされない場合は撤収できる
    (5)武器使用は命の防護のための必要最小限に限る
     
    参考
    9/30/2009

    UNMIN派遣隊員がCRF報道官に

    谷川昌幸(C)
    やはり,そうだったのか! UNMIN派遣陸自隊長(第1次隊)をつとめた石橋克伸1佐が,中央即応集団(CRF)司令部の報道官になっていた。
     
     1.自衛隊とNGOとUNMIN派遣隊員
    以前に紹介した田鈴香氏の記事の続編「続・ただ今,陸上自衛隊国際活動教育隊に滞在中! 集中模擬訓練「指揮所演習」始まる」(日経ビジネス,9月30日)によると,NGOのいくつかは,どうやら自衛隊に取り込まれつつあるようだ。
     
    そして,そのNGOと自衛隊の媒介役の一人が,UNMIN派遣経験を持つ石橋1佐なのだ。吉田氏は,CRF「指揮所演習」についてこう説明している。
     
     「次のスケジュールにあったNGOの訪問では、実際のNGO、難民支援協会の事務局次長が仮想の現場を訪れた。そして、自衛官を相手に、実際にNGOの活動との調整をするロールプレイを行った。
      評価役の教官や他の隊員など衆人が見守る中できっと緊張したのだろう。NGOが繰り出す事情説明と協力の要請に、渉外担当の担当官は、「答えず拒否せず」の感じが否めない。お役所的な対応に感じられる。
     日常的に人に慣れているNGO職員の方が、「では、こうすればいいのでしょうか」と、口調は滑らかだ。筆者は、隊員はNGOに助けられているな、とすら感じた。
     ここは、さすがに、ロールプレイ後、先輩でネパールの国際連合ネパール支援団(UNMIN)で軍事監視員の経験を経てきた石橋克伸1佐が積極性を持って接するようにと、助言をした。」
     
    見事な「民軍協力」だ。ネパールは「NGOの総合デパート」といってよく,そこで実地訓練をしてきた石橋1佐がNGOの扱いになれているのは当然である。
     
    2.自衛隊に取り込まれるNGO
     しかし,NGOは「民軍協力」のつもりでも,実際には丸腰NGOは,権限と金と武器を持つ自衛隊の対等パートナーではありえない。必ず,いつしか「軍民協力」になり,NGOは軍に利用されることになる。
     
     3.米軍ー自衛隊ーNGO
    この自衛隊=NGO「軍民協力」が恐ろしいのは,その自衛隊も米軍の下働きをさせられているからだ。吉田氏はこう説明している。
     
    武器だけでなく、計画書作成でも米国様式を共有 ・・・・なるほど、米軍様式は武器だけではなく、計画書作成というソフトにおいても共有されているのか、と気付いた。」 (ゴシック原文)
     
    米軍は世界展開しており,しかもオバマ政権は米単独主義から国際協調主義へと戦略転換した。自衛隊はその米軍に魂(ソフト)も身体(武器)も握られ,米国が要求すれば,米軍補完のため自衛隊の世界展開を進めざるをえない。しかも,米国はソフトパワー重視に転換したから,自衛隊の世界展開は必然的に民生支援重視の「軍民協力」となる。米軍が自衛隊を利用し,自衛隊がNGOを取り込み,利用する。あまりに単純明快で,にわかには信じられないほどだ。
     
    そして――自衛隊ネパール派遣こそが,その広告塔なのだ。
     
    参照
    9/22/2009

    自衛隊海外派遣:「民軍協力」から「軍民協力」へ

    谷川昌幸(C)
    1.UNMIN派遣隊員がCRF教官に
    吉田鈴香著「ただ今,陸上自衛隊国際活動教育隊に滞在中!」(日経ビジネスOnline,2009.9.16)によると,UNMIN派遣陸上自衛隊員(氏名不明)が,帰国後,その経験を評価され,中央即応集団(CRF)国際活動教育隊の教官に任命され大活躍されているという。

    これは,当然,予想されていたことだ。ネパールに陸自隊員6名を派遣しても,ネパールにとっては,象徴的意味はあっても,実質的にはほとんど無意味だ。

    しかし,自衛隊にとっては,UNMIN派遣は大きな意味を持つ。寺院とヒマラヤ,素朴な村人と子どもたちを背景に,ほとんど危険のないネパールで崇高な国際協力活動をする。その様子をPRし,またその経験を教えるなら,ネパール好きの日本人たちは自衛隊の国際協力活動を絶賛,自衛隊入隊希望者が激増し,隊員は競ってCRFを志願するに違いない。UNMIN派遣は,自衛隊の海外活動拡大への先兵なのだ。

    自衛隊にとって,海外活動,特に国際協力活動は,無限に活動領域を拡大しうる未開の新天地だ。大勝で政権を握った民主党も,この方面への自衛隊活用を考えており,自衛隊にとっては念願の好機到来といったところである。

    そして,その中心にあるのが,CRF(中央即応集団)である。山口浄秀CRF司令官(当時)によれば,CRFは「地球規模の対応」を任務に,「所命必遂,世界最強を目指す」という(『小原台だより』H20.1.1)。地域無限定,任務実質無限定,その気になれば,自衛隊はどこまでも拡大できる。「世界最強を目指す」と公言しているのだから,まちがいはない。
    陸自・駒内駐屯地(グーグルより)

    2.自衛隊違憲論の凋落
    自衛隊をめぐる状況は,この数年で劇的に変化した。朝日新聞の自衛隊容認・積極活用への変節以降,自衛隊違憲論は凋落し,違憲を唱えても神学論争と嘲笑され,相手にもされなくなった。いまでは自衛隊の存在は当然のものとされ,それを前提に,いかに活用するかがもっぱら議論されるようになった。

    自衛隊の海外派遣についても,以前であれば,合憲違憲の議論は避けられなかったのに,いまではそのような原則的な議論は棚上げにされ,あるいは海外派遣の合憲性は当然のものとされ,もっぱら具体的な国際協力活動において自衛隊をどのように活用するかが議論の中心になっている。

    3.民軍協力
    自衛隊の国際協力活動を認めるなら,当然,軍隊(自衛隊)と非軍事組織との関係が問題になってくる。自衛隊は,派遣先で,非軍事組織の人々と様々な形で協力し活動せざるをえない。これが「民軍協力(Civil-Military Cooperation)」である。この「民軍協力」については,たとえば次のように説明されている。

    「民軍協力(CIMIC)=国際的な人道援助や平和活動において文民組織と軍事組織とが共通の目的や個別の目的の実現のために、互いが連携を図って協力することを指す場合に用いる。単なる民軍間の意思疎通、情報共有、調整といったレベルではなく、文民組織と軍事組織が共同で活動を展開する場合を想定している。・・・・なお、陸上自衛隊中央即応集団ではNATOのCIMICにあたる言葉に「民生協力活動」を用いており、その目的として「現地政府機関や地域住民等の信頼と協力を得て任務遂行を容易にする」ことを掲げている。」(上杉勇司「序章」,上杉ほか編『国家建設における軍民関係』2008,p25)

    この「民軍協力」あるいはそれよりやや広義の「民軍関係(Civil-Military Relationship)」の行動指針は,文民組織側がつくったものであるが,最も標準的とされている「複合緊急事態での国連人道活動のための軍隊と民間防衛資産の使用に関する行動指針(MCDA)」(2003)によれば,次のようなものだという。

    「①軍事的資産の使用要請は、政治的な当局からではなく、人道・現地調整官が人道的基準のみにもとづいて決定する。

    ②軍事的資産は、最後の手段として人道支援組織に利用される。つまり、軍事的資産は、文民の側に代替措置がない場合に、緊急の人道的ニーズを満たすために活用される。

    ③たとえ軍事的資産を活用したとしても、人道活動は文民の性格と特徴を保つ。軍事的資産は軍の統制下に残るものの、人道活動の全般的な権限と統制は人道支援組織が保持しなくてはならない。このことは、軍事的資産が文民の指揮統制下に入ることを意味しない。

    ④人道活動は人道支援組織が実施しなくてはならない。軍事組織は人道活動を支援する役割はあるが、本来業務での人道支援組織と軍事組織の役割と任務を明確に差別化するため、可能な限り、直に人道援助を施してはならない。

    ⑤軍事的資産を活用する際には、予め期限と規模を明確にし、今後どのように文民への移譲を進めていくのかを明らかにする。

    ⑥人道活動を支援するために軍事要員を派遣している各国は、国連行為規範(UN Codes of Conduct)と人道原則を遵守しなくてはならない。」(上杉,上掲書,p31)

    4.軍事活動の本来的消極性と日本の役割
    途上国支援活動においては,文民組織(政府,民間)が軍隊の支援を受けざるをえない場合があることは,もちろん否定できない。支援が必要な事態であればあるほど,紛争や内戦で治安が乱れており,文民組織だけでは安全の確保が難しい場合は確かにある。

    しかし,ここで注意すべきは,上記MCDAも規定するように,一般に,軍隊による支援活動はあくまでも非常時,緊急時に限られるのであり,軍民の関係は分離を原則としなければならない。実力組織としての軍隊の活動は,本質的に消極的(negative)なものであり,他に手段がない場合の最後の手段として許容されるにすぎない。

    ところが,日本の場合,もともと,この限定された国際協力でさえも許されていない。日本国憲法をきちんと読めば,軍隊(戦力)保持の禁止は明白であり,したがって違憲の軍隊を海外に派遣し国際協力活動をすることは,論外であり,憲法上それは到底許されない。

    他国から何を言われようとも,日本は憲法上,非軍事的国際協力に徹せざるをえないし,また,現代史の流れをみると,それこそが今後の世界の進むべき方向であることも明かである。日本は非軍事的平和貢献を選択したのだから,率先してその課題に取り組むべきである。

    5.「民軍協力」から「軍民協力」へ
    日本は非軍事的国際協力に徹すべきだと考えるのは,憲法により禁止されていることと,歴史がそれを要請していることに加え,軍隊の持つ本質的危険性を恐れるからである。いったん自衛隊(軍隊)を海外に出し,「民軍協力」を始めてしまうと,おそらく「民軍協力」はいつしか「軍民協力」に変質してしまうであろう。特に日本においては,その危険性が高い。

    軍隊は最強実力集団であり,秘密主義(軍機)と自己増殖本能を持つ。特に日本は,軍部独走の苦い経験を持つ。アメリカですら,産軍複合体は制御不能ともいわれている。そのような本質をもつ軍隊(自衛隊)を監視が困難な海外に出し,国際協力に参加させると,民主的統制(文民統制)が利かず,冒険主義と自己増殖に陥る恐れが強い。「民軍協力」のつもりで始めたら,いつの間にか「軍民協力」になっていた――そのような恐れのある危険な冒険は,始めるべきではない。

    6.「軍の必要性に目覚めた」吉田氏
    冒頭で紹介した国際ジャーナリスト吉田鈴香氏の場合も,「民軍協力」が「軍民協力」に変質してしまいそうな危惧を感じざるをえない。

    吉田氏には,『アマチュアはイラクに入るな』(2004),『紛争から平和構築へ』(2003),『NGOが世界を拓く』(1995)などの著作がある。私は,いずれもまだ読んではいないが,書名だけからも,途上国援助や平和構築に関する広い知見をお持ちの方だということがよくわかる。

    ところが,先述の記事「ただ今,陸上自衛隊国際活動教育隊に滞在中!」を読むと,本当にこれで大丈夫かな,「民軍」のつもりが「軍民」になり始めたのではないか,と疑問に思うような部分が少なくない。

    吉田氏は,紛争やPKOの取材を通して「軍の必要性に目覚めたことが契機で自衛隊に関心を持ち始めた」。この記事は,その吉田氏が中央即応集団(CRF)国際活動教育隊(陸上自衛隊駒内駐屯地)に,講師,聴講生,取材者として滞在し見聞したことの報告である。

    記事によれば,CRF国際活動教育隊には教官が約80名いて,その一人がUNMIN派遣経験者(氏名不明)である。

    まず秘密について。「教育の内容には,秘密情報に触れる講義があるからと,全課程を体験入学することは許されず・・・・」と記されているように,著者も自衛隊が講義ですら秘密にする組織であることを認めている。(軍に秘密は当然だと反論されるかもしれないが,私には,何をしているのか分からないような実力組織を無力な文民がコントロールできるとは,どうしても思えない。)

    その自衛隊について,著者が関心を持ったのは,「昨今重要な概念・手法として注目を浴びる『民軍協力』『地域復興チーム(PRT)』だった」。そして,すでに「研究の世界でも軍と民の交流は行われているのだから」,講義の内容は「文民がとらえるそれと同じであった」という。

    しかし,これはつい数行前の記述とは矛盾する。著者は「秘密情報に触れる講義」には参加を許されなかった。軍隊には,文民組織では考えられないほど多くの秘密情報がある。講義の内容が文民組織と同じであるはずがない。特にNGOの中には,「民軍協力」そのものに否定的なものも少なくない。

    著者も,教官たちへの取材を通して,中央即応集団では「任務全般における『民軍協力』『地域復興チーム』の位置づけが決定的に文民のそれと違うことに,気がついた」。

    「軍にとってそれは1つの必要事柄にとどまる。軍が求められているのは,現地の要望と自分たちの能力との最大公約数をかなえること,任務を遂行するために自陣の兵(自衛官)が心身ともに正常な状態で過ごせるように配慮すること,母国の国民にアカウンタビリティーを示すことである。・・・・他国軍との協調行動,法令遵守,軍人の質の維持,必要な装備品の補給,つまり兵站など,『軍』としての普遍的な機能を維持するための能力をどんな地においても保つことが大事である。民軍協力もPRTも,任務達成のために必要だから行う1つの方法にすぎないのだ。」

    ちょっと文意がつかみにくいが,結局は,軍は軍としての存立が第一ということではないか。

    また,「家族の無事は,平常心であり続けるために必要」とゴチックで力説されているが,これはロマンチックな「銃後の守り」を想起させる。

    さらに,こんなこともサラッと主張されている。

    「教育の終盤,いよいよチームは集中訓練に入った。ある仮想の国に入って,国連PKOの枠組みの中で後方支援業務を行い,自主的な人道支援活動も行うことを想定して,計画,実施を行うのである。」

    「(高木真一三等陸佐は)イラク派遣時,ただ上司からの指示を待つだけでなく,もっと自分からアクションを起こすべきではなかったか,と後になって思い始めたというのだ。」

    これは,かなり危ない文章だ。軍隊は上官への絶対服従を大原則とする。武器を持つ部下が自主的に判断し動き始めたら,文民統制も何もあったものではない。現場で自主的に判断し積極的に行動してよいのは,文民組織,特にNGOである。軍隊はその正反対。軍人は,文人の命令を受けた上官の命令に絶対服従すべきもの。海外派遣軍人に,現地での自主的活動は,原理的に,許されない。

    吉田氏が,自衛隊にこのような文民統制違反の活動を期待されるのは,文民組織の行動規範を無意識のうちに軍隊に移入させているからではないだろうか。吉田氏において,「民軍協力」はすでに「軍民協力」に変質し始めているのではないか。こんなことさえ主張されている――

    「これまで国際協力の現場を多く見てきて,国力を強くするためのポイントは農業と軍であると考えている・・・・。」

    ■戦車に乗り感激の吉田氏(月刊正論)
     (クリック拡大)
    「90式戦車に乗り込み感激のあまり手を挙げる宮嶋氏と吉田氏。戦車運転指示は岡本陸曹長、運転は澤入陸曹長にお願いした。」(月刊正論 http://www.sankei.co.jp/seiron/koukoku/2002/ronbun/06-r3.html)



    9/10/2009

    アメリカン・クラブ,空撮

    谷川昌幸(C)
    アメリカン・クラブ付近は,旅行者にとっては,エベレストより危険な場所だ。拘束はおろか,射殺さえされかねない。そんなにまでして何を守っているのか? 運動場や娯楽施設? まさか。そこで,空撮を試みることにした。
     
    といっても,そんなことをすれば,高射砲かミサイルで撃墜(?)される。そこで,個人プライバシーから軍事機密まで平然と暴露してはばからない,グーグルを拝借することにした。
     
    ご覧のように,野球場やテニスコートといくつかの建物があることは分かるが,それ以上は無理だ。グーグルがもう一段解像度を上げてくれるのを待つより仕方ない。どなたか,もしすでに詳しい情報をお持ちであれば,ご教示願いたい。
     
    市販地図。中央がアメリカンクラブ。(上)王宮博物館,(左上)文部省,(左)SAARC本部,タメル,(左下)選管,(右下)アンナプルナホテル
     
    グーグル地図。上記とほぼ同じ場所。アメリカンクラブ表示なし
     
    グーグル地図(クリック拡大
     
    グーグル空撮(クリック拡大
     
     ■米軍佐世保基地の場合
    もう一段解像度が上がれば,出入りの車両も人物も丸見えとなる。
     
    ■海上自衛隊横須賀基地の場合
    軍艦,車両,人物まで丸見え。グーグルの軍事機密暴露への貢献は高く評価される。軍事基地の動画配信を期待している。 
    9/6/2009

    UNMINとCIA

    谷川昌幸(C)
    「人民評論」はそのつもりで読むと面白い。「UNMINの自由チベット・キャンペーン」(People's Review, 4 Sep 2009)もそうだ。情報源がはっきりしないが,ひょっとすると本当かなぁ,と考えさせてくれる。
     
    記事によれば,ランドグレン代表をはじめUNMIN高官たちは,自由チベット運動に加担し,チベット人たちに武器を供給している。ある情報筋によると――
     
    「UNMIN代表はカーストや階級[の対立]を利用し,国家(state)を創るCIA戦略に精通している。ランドグレン代表は,エチオピアでCIA活動に加担し,エチオピアからエリトリアを創り出した。・・・・代表はマオイストの信頼を勝ち取り,次にヒマラヤ国家(state)を分離独立させ,これによってCIAの対中国作戦を達成することをもくろんでいる。少なくともこれだけは明らかだ――ランドグレンは,多くの民族(nations)を分裂させ,連邦制に向かわせた。彼女は,CIAの最終目的を実現するために,ネパールに来ているのだ。」
     
    記事によれば,エチオピアでもユーゴスラビアでもナショナリズムが強く,アメリカの思い通りにならなかった。そこで――
     
    「結局,CIAはエチオピアとユーゴスラビアに民族(caste)自治のスローガンを浸透させ,その[分割の]仕事をさせるため,ランドグレンを送り込んだ。情報筋によれば,ランドグレンはエチオピア分割に成功し,次にユーゴスラビアの[国家]アイデンティティを抹殺した。情報筋によれば,CIAの三番目の特別任務は,このネパールである。」
     
    「UNMIN筋自身が,UNMINの全職員はCIA関係者か英調査機関スタッフであることを認めている。」
     
    「皆が,UNMINは国連平和ミッションであるという幻想にとらわれている。マオイストも当初しばらくは歓迎していた。しかし,UNMINは,マオイストが民族(caste)問題を持ち出したので,マオイストを利用しているにすぎない。情報筋によれば,CIAが北部にヒマラヤ国家(state)を設立することに成功すれば,UNMINはマオイストを捨て去るだろう。CIAが左翼愛国勢力を支持することは決してない。マオイストはそのことに気づくべきだ。」
     
    さらに記事によれば,ゴードンUNMIN顧問は,米英合同機関の戦略家であり,コンゴでフツ族とツチ族の対立を創り出すことに成功した。「彼はネパールでカス系とモンゴル系との対立を創り出そうと目論んでいる。」
     
    以上の記事は,無署名であり,情報源も「公安情報筋」や「情報筋」なので,信憑性を確かめようもないが,状況からして,いかにもありそうな話だ。
     
    ネパールにおける民族自治・民族自決の議論はいささか不自然であり,必ずしも内発的とは言い切れないような気がする。被抑圧民族の不満が募っていることは事実だが,それに火をつけ煽っているのは,むしろ欧米諸国ではないか? UNMINを中心とする「国際社会」の強引とも思える介入をみていると,そのような気がしてならない。
     
    むろん,いくら何でも,UNMINがCIAの手先(agent)であり,ランドグレン代表もCIAにより送り込まれている,といったことはあるまい。
     
    しかし,その一方,UNMINがネパール内政に深く関与し,世論を民族自治,包摂民主制,連邦制に向け強引に操作し,以前であれば明白な内政干渉であったようなことまで手がけていることは事実である。
     
    ネパール平和構築のためには,このような強引な介入もやむを得ないのだろうか? ネパールにとって,内発的民主化は本当に不可能なのだろうか? UNMINも,おそらくこの問いを常に問いつつ,活動しているのだろう。ネパールのような国への介入は,どのような国にとっても国際機関にとっても,大変難しく,相当の覚悟が求められることはたしかなようだ。
    8/27/2009

    「平和復興省」訪問

    谷川昌幸(C)
    8月26日,マオイスト戦闘員の和平協定違反事件(武器を持ち駐屯地から集団外出)で緊張感高まる中、渦中の「平和復興省」を訪問し,ラカム・チェムジョン大臣,アルジュン・ライ事務局長と会見した。
     
    平和復興省など主な官庁があるシンハダーバーは,人民戦争激化以前は,自由に出入りできたが,いまは厳重な入域規制がなされ,あらかじめ許可を取らないと入れない。
     
    市民にとって不便きわまりないが,官僚たちにとっては必ずしもそうではないようだ。シンハダーバーはいまや聖域となり,内部はブラックボックスとなりつつある。以前は,様々な集団や個人が陳情や抗議に訪れ,その限りで権力は監視されていた。ところが,いまは掃除が行き届きエアコンが利いた快適な聖域内で、役人たちが特権を享受しはじめているように見える。
     
    平和復興省は,以前どこかの省が使用していたビルを一棟譲り受け,使用している。国連平和基金,ネパール平和基金を扱い,いまや花形新興官庁。
     
    「平和」は,以前は「戦争がない状態」と消極的(negative)に規定され,仕事は軍事にほぼ限定されていた。これは国防省の仕事である。ところが,いまでは「平和」は「構造的暴力がない状態」と規定され,これは基本的人権が保障された積極的(positive)な状態である。平和復興省は,その「平和」を任務とし,国連支援も受け,巨大化しつつある。26日も,UNMIN幹部たちが来ていた。
     
    平和復興省では,チェムジョン大臣、ライ事務局長と会見した。30分程度だったので,話しは概略的なものにとどまった。
     
    日本は,平和復興省の「平和基金」に関する限り,直接的拠出はごく少ない。なぜなのか,理由は不明。
     
    日本政府は25日閣議で、陸自隊員6名のUNMIN派兵をまた半年延長し、2010年3月末までとした。ネパール平和構築には,こうした軍事的支援よりも,平和基金にもっと拠出し,使途を厳重に監視しつつ,人権回復・社会復興に協力した方がより効果的だと思うのだが,いかがであろうか。
     
    チェムジョン大臣と会見(大臣室)
     
    平和復興省ビル
    8/12/2009

    オバマジョリティとObamajority

    谷川昌幸(C)
    先日,広島・長崎「平和宣言」を批判したら,日刊ベリタなどが紹介したためか,非難の雨霰,防戦一方だ。しかし,どう考えても,「オバマジョリティ」は変だ。(参照:広島・長崎「平和宣言」批判
     
    1.ナガサキアピールとオバマジョリティ
    このオバマジョリティについては,平和市長会議(7-10日,長崎)でもフランスの市長から反対意見が出たそうだ。いかにも一言居士,フランスらしい。会場からも反対意見賛同の拍手があったが,長崎市長はそのまま「ナガサキアピール」を採択してしまった。要旨によれば,次の通り。
     
    「オバマ大統領は『世界中の人々が恐怖のない生活を送る権利を求めて共にたたかう』よう呼び掛けた。私たちの答えは,『もちろん,皆で協力し合えば核兵器を廃絶できる』だ。加盟都市は,核の脅威からの解放を求める世界の大多数の国々や人々を指す『オバマジョリティー(Obamajority)』という言葉を採択している。」(朝日,8月12日)
     
    2.オバマジョリティは米民主党用語?
    ここで不思議でならないのは,オバマジョリティ(Obamajority)という用語の由来。新聞では,「オバマ大統領と核廃絶を望む多数派(マジョリティー)市民の連携を願って秋葉市長が提唱した造語」(朝日,8月12日)とされ,他でもそのように説明されているが,本当にそうなのか?
     
    私は,英語帝国主義粉砕を叫ぶ保守主義者で,敵性言語英語,特に米語については知識はまるでないが,それでも,こんな単純な造語は,当然,アメリカ人が先につくり,流通させているはずだと思い,インターネットを見たら,無数に出てきた。
     
    2-1.新語辞典の定義
    Obamajority:  noun, The new (but no longer "silent") majority of Americans, who will be sweeping the polls TODAY! (Addictionary)
     
    この定義は未来形なので,米大統領選以前に,すでにオバマジョリティは民主党用語として流通していたことがわかる。
     
    2-2.ActBlue
    ActBlueは,米民主党の政治資金団体で,2004年設立。ここが下図のように,「The New Obamajority」というネット献金団体をつくり,活動してきた。オバマジョリティとは,即物的にいえば,米民主党政治献金キャンペーンなのだ。
     
     
    ――オバマジョリティは,やはり広島市長の造語ではないのではないか? それとも,幼児レベルの英語能力しかない私の思い違いにすぎないのだろうか?
     
    3.米語圏からの嘲笑
    日本のこのようなカタカナ米語については,さっそく米語圏からの皮肉な冷笑が浴びせられている。
     
    "What's a Obamajority"  by NERVUN,  Wed Aug 05, 2009
    The 64th anniversary of the bombing of Hiroshima was today and once again, the mayor of Hiroshima called on the world to destroy all nukes. This year, thanks to President Obama's speech last April in Prague and the hope that he will be the first sitting president to visit Hiroshima, President Obama was mentioned in the speech numorus times (Inlcuding, yes, 'Yes, we can' because those now seem to be the only English words every Japanese knows). However, in the speech, the mayor said that the great global majority calling for the end of nuclear weapons is the Obamajority. (http://forum.nationstates.net/viewtopic.php?f=20&t=10989&start=0)
     
    著者のNERVUN氏は,長野県在住の高校英語アシスタント。おそらく各県に配置されている英米語圏出身の英語補助教員の方であろう。
     
    「オバマ大統領が(広島市長)宣言の中には何回も出てきた(そう,あの『イエス・ウイ・キャン』までも含めて。というのも,日本人が誰でも知っている英語はいまやこれらだけのようだからだ)」。
     
    著者は,英語がほとんどできない日本人英語教師たちと悪戦苦闘しつつ(これは著者自身の説明),それでも英語補助教員として日本人高校生のために英語を教えて下さっているらしい。
     
    その,おそらく米国人であろう英語補助教員から見て,広島「平和宣言」は,この程度のものなのだ。
     
    4.カタカナ英語の怖さ
    広島市長や長崎市長は「オバマジョリティ」と「Obamajority」は同じと思っているかもしれないが,「オバマジョリティ」は日本語であって米語ではない。
     
    アメリカ幼児以下の米語能力しかない私には,微妙なニュアンスはわからないが,NERVUN氏は「イエス・ウイ・キャン」しか分かりもしない日本人が「オバマジョリティ」とは笑止千万,と批判しているように思えてならない。
     
    Obamajorityは,おそらくアメリカでは民主党用語であり,世界では通常兵器で米国の世界覇権を再構築しようとする米国スローガンと受け取る人が少なくないであろう。
     
    カタカナ英語で「オバマジョリティ」などといっていると,言葉のそのような意味のズレを見過ごしてしまう恐れがある。
     
    5.カントとオバマ大統領
    私は,オバマ大統領が傑出した政治家であり,その核廃絶論も真摯なものであることを信じている。オバマ大統領は,空想的観念論者ではなく,カント的現実主義者である。
     
    カントは,現実主義に徹した結果,武器は武器によって,戦争は戦争によって廃絶される,と唱えた。兵器の「進歩」が戦争を不可能にするから,常備軍を廃止し,諸国家連合を組織し,永遠の平和を求めよ,とカントは人間の理性に訴えかけたのだ。
     
    オバマ大統領は,現代のカントたり得る人物だ。私は,オバマ大統領がそのような本物の現実主義平和論を追求する限り,彼を支持したいと思っている。
    8/9/2009

    広島・長崎「平和宣言」批判

    谷川昌幸(C)
    1.反核・非武装平和の理念
    8月9日,長崎・爆心地公園の「ピースウィーク2009市民集会」に参加,原爆犠牲者を追悼し,核廃絶への努力を改めて心に誓った。
     
    広島・長崎への原爆投下は戦争犯罪であり,その責任は徹底的に追及されなくてはならない。また,核兵器は人類絶滅をもたらしかねない悪魔の兵器であり,廃絶に向け,最大限の努力を続けるべきだ。
     
    反核・非武装平和は日本国憲法の根本理念でもあり,私は憲法保守主義者として,この理念に殉じたいと願っている。
     
    長崎・爆心地公園
     
    2.「平和宣言」への違和感
    この反核・非武装平和の立場からすると,今年の広島・長崎の「平和宣言」には,まず全体として,大きな違和感を感じる。
     
    広島市長も長崎市長も,オバマ米大統領のプラハでの核廃絶発言を絶賛した。広島市長は,「私たちには,オバマ大統領を支持し,核廃絶のために活動する責任があります」と述べているし,長崎市長は,オバマ大統領の「強い決意に,被爆地でも感動が広がりました」と手放しで称賛している。
     
    しかし,これは少し違うのではないか。オバマ大統領は崇高な理想主義者でもなければ,人類救済のため核廃絶を唱えているわけでもない。オバマ大統領は,冷徹な現実主義者であり,アメリカ国益のため核廃絶努力を宣言したのだ。
     
    世界が合理的な主権国家から構成されている限り,核兵器は国家の安全を守るもっとも強力な兵器であった。ところが,グローバル化により,世界は非国家的テロ攻撃の時代となり,核兵器はかつてのような抑止力を失ってしまった。核兵器は,持てば持つほどテロ攻撃を誘発し,国益を害するようになった。現実主義者オバマ大統領は,この新しい現実を見据え,核廃絶への「道義的責任」を唱え始めたのだ。
     
    このことは,オバマ大統領以前に核廃絶を唱えたのが,アメリカを代表する現実主義者たちだったことをみれば,すぐ納得できる。2007年1月4日,ウォールストリートジャーナルに「核兵器なき世界(A World Free of Nuclear Weapons)」という論説が出て世界を驚かせた。筆者は,G.シュルツ,W.ペリー,S.ナン,そしてキッシンジャーの4人。彼らはいずれも米政府や議会の要職を務めた人物で,当然,核抑止力論を支持していた現実主義者である。それが揃いも揃って核廃絶を唱えたのだから,世界は驚いた。
     
    しかし,これは決して彼らの変節ではない。彼らはいまも冷徹な現実主義者であり,アメリカ国益を第一としている。彼らは,現実主義者だからこそ,アメリカ国益のためには核廃絶努力,あるいは少なくとも核廃絶スローガンが必要になった,と判断したのだ。
     
    これを見ても,オバマ大統領がアメリカ国益第一の現実主義者であることは,明白である。
     
    むろん,誤解なきよう補足しておくと,オバマ大統領の核廃絶論が平和論として高く評価されることはいうまでもない。それは,理想主義者たるレーガン,ブッシュ両元大統領の核抑止力論の観念性,空想性とはまるで次元の異なる冷徹な現実主義的平和論である。その意味で,あるいはその観点から,私たちはオバマ大統領の核廃絶努力宣言を支持し,核廃絶のため共闘することが出来るし,また努力すべきなのである。
     
    3.核兵器から通常兵器へ
    このような見方に対しては,理想主義だろうが現実主義だろうが,核廃絶ならそれでよいではないか,と批判されるかもしれないが,実際には両者は決定的に異なる。
     
    オバマ大統領を理想化し手放しで絶賛していると,オバマ大統領が抑止力を失った核兵器から通常兵器へと軍事戦略を転換しつつある危険な事実を見過ごすことになってしまう。
     
    アメリカは,もはや使えず,抑止力もなくなってきた核兵器の比重を下げ,通常兵器の比重を高めることにより,アメリカの世界支配を維持・強化しようとしている。このことは,プラハ核廃絶努力宣言がアフガン派兵増強とセットであったことを見れば,一目瞭然である。
     
    そして,いうまでもないことだが,核兵器が削減されれば,通常兵器は増強されてもよい,ということには決してならない。あえていうなら,核兵器であろうが通常兵器であろうが,被害者個人にとっての残虐さには質的な差はない。私の父は,フィリピンで腰を撃たれ,弾丸摘出ができず,長年後遺障害に苦しみ続け,おそらく鉛か何かの影響でガンになり死亡した。通常兵器であれ,残虐に変わりはなく,廃絶されなければならない。
     
    広島・長崎両市長の「平和宣言」は,オバマ大統領を理想化・道徳化しており,したがって「宣言」を読む人々に,オバマ大統領がもつ核廃絶と通常兵器増強の危険な二面性を見過ごさせる恐れがある。これは「平和宣言」としては適切とはいえない。
     
     4.英語帝国主義への屈服
    つぎに,これは広島「平和宣言」についてであるが,「宣言」には不自然かつ卑屈な英語使用が見られる。
     
    「世界の多数派である私たち自身を『オバマジョリティ』と呼び,力を合わせて2020年までに核兵器の廃絶を実現しようと世界に呼び掛けます。」
     
    これはひどい。「オバマジョリティ」とはいったい何か? 右派流に表現すれば,「日本語の品格」もなにもあったものではない。 あるいは,Obamajorityは,米民主党の党宣伝活動の一つではないか? 広島オバマジョリティは,米民主党に政治献金でもするつもりか?
     
    「オバマジョリティ」――まるで,アメリカと英語と民主党に卑屈にこびているようではないか。日本語として,およそ美しくない。しかも,最後に数行の英語が挿入されている。これはいったい何のつもりか?
     
    広島市長の「平和宣言」は,日本語で書かれた宣言である。日本語で書く以上,日本の言語文化を尊重し,最大限,完成度の高い日本文にする努力を尽くすべきである。自文化を尊重せずして,どうして他の文化を尊重し,世界平和が実現できるのか。
     
    完全な思い違いは,「最後に,英語で世界に呼び掛けます。We have the power....」の部分。
     
    世界への呼びかけがなぜ「英語」でなければならないのか? 世界には,たくさんの言語がある。そして,自分たちの言語を守るため,命がけで闘っている人々も少なくない。この宣言は,そのような言語,そのような人々のことなどまったく眼中になく,世界支配言語たる英語に与し,しかも,あえていうならば,いまや米政府の国策となった,いわゆる「核廃絶努力」宣言を絶賛しているのだ。
     
    5.多文化共生時代の平和宣言を
    広島市長は,グローバル化により世界が根本的に変化してしまった現実をまったく見ていない。オバマ大統領が現実主義だとすれば,広島市長は観念的理想主義だ。
     
    参加者の大多数が日本人である広島の「平和祈念式」で広島市長が宣言するのだから,「平和宣言」は「品格のある日本語」で書かれるべきだ。
     
    そして,それを優れた語学能力をもつ翻訳者に依頼して各地の言語に翻訳し,同時通訳やテレビ,ラジオ,インターネット,新聞,雑誌等を通して,世界中に配布すべきである。
     
    「オバマジョリティ」といった米民主党宣伝用語を安易に拝借し,広島が全市をあげて米政府支持や民主党支持を表明しているかのような印象を世界に与えるべきではない。
     
    グローバル化時代における「平和宣言」は,世界中の被抑圧文化や被抑圧諸民族と連帯するものでなければならない。核廃絶において,核保有国や先進諸国が大きな役割を果たすとしても,現代の多文化・多民族の時代においては,圧倒的多数の他の諸国の積極的協力がなければ,核廃絶の目標はとうてい実現できないであろう。
     
    ▼補足:軍事同盟強化・対テロ戦争参加要求
    オバマ大統領のプラハ演説の隠されたねらいは,アメリカを盟主とする軍事同盟の強化と,対テロ戦争や地域紛争への参加要求である(演説引用は日経HPより)。
     
    「共通の安全保障を提供するため、同盟(NATO)を強化しなければいけません。」
     
    「NATOの(集団防衛条項)第5条は明確に述べています。一国への攻撃はすべての国への攻撃であると。これは今日の約束であり、永遠の約束でもあります。」
     
    「チェコ共和国の人々は米国が攻撃されたとき、その約束を守りました。何千人もの人々が米本土で殺され、NATOは反応しました。アフガニスタンでのNATOのミッションは大西洋の両側の人々の安全の基礎となっています。」
     
    また,核兵器についても,従来とまったく同じ論理で,保有を宣言している。
     
    「冷戦思考に終わりを告げるため、私たちは国家の安全保障戦略における核兵器の役割を小さくし、他国にも同じようにすることを促します。間違えてはいけません、こうした兵器が存在する限り、米国は敵国を抑止するために安全でしっかりした、効果的な(ミサイルの)保有量を維持します。そしてチェコ共和国を含めた同盟国を防衛することを保証します。」
     
    「イランからの脅威が続く限り、私たちは費用対効果があり、(能力も)証明されたミサイル防衛システムを進めます。」
     
    つまり,核兵器については,相手が核削減に応じたら自分も核削減する,ということであり,その限りでは,従来の核抑止力論と理論的には何ら変わりはない。
     
    その一方,同盟国に対する軍事協力要求は従来以上に鮮明に打ち出されている。したがって,日本にとっては,オバマ政権は,レーガン政権やブッシュ政権よりも,はるかに危険である。
     
    オバマ政権を呑気に礼賛していると,対テロ戦争・地域紛争への自衛隊派遣を拒否できなくなってしまう。自衛隊派遣は際限なく拡大し,名誉の戦死が続出し,日本は軍国化して行くであろう。
     
    オバマ大統領は卓越した政治家であり,核兵器の限界を見抜き,核廃絶を目標として掲げた。それは高く評価できるし,日本もその目標実現のため努力すべきだが,同時に,オバマ氏は世界最強国家アメリカの大統領であって,長崎の小浜の善良な一市民ではない。日本は,あくまでも日本国憲法の大原則に従って,核廃絶を目指すべきである。
     
    (参照)
     
     
    7/31/2009

    講演:ネパール平和省と日本の平和構築支援

    ピースウイーク2009(8月1~9日)
     
    被爆地長崎で平和について考える「ピースウイーク2009 in NAGASAKI」(同実行委主催)の講演会、市民集会などが8月1~9日、長崎市筑後町の県教育文化会館などで開かれる。問い合わせは同実行委(電、ファクス095・822・4098)。  
     
    ▽1日=被爆者、早田一男氏の講演会「私の平和行脚の軌跡」(午後2時から県教育文化会館)  
    ▽2日=長崎大教授、谷川昌幸氏の講演会「ネパール平和省と日本の平和構築支援」(同)  
    ▽3日=ジャーナリスト、石丸次郎氏の講演会「現場報告 北朝鮮はどうなっているのか?」(午後6時半から県教育文化会館)  
    ▽4日=リムピース編集委員、篠崎正人氏の講演会「海上自衛隊のソマリア派遣と海賊対策」(同)  
    ▽7日=元京大講師、小林圭二氏の講演会「“プルサーマル”行き着く先は…?」(同)  
    ▽8日=端島・高島ピースクルーズ(午後1時から大波止ターミナルで受け付け、同1時半出発)、在韓被爆者らによる「被爆体験を語り継ぐ会」(午後6時半から県教育文化会館)  
    ▽9日=ピースウイーク2009市民集会(午前10時から爆心地公園)、魚雷発射試験場などを巡るピースバス(午後1時に爆心地公園集合) 
    ( 2009年7月10日長崎新聞掲載)
    7/25/2009

    日の丸とヒマラヤとゾウと

    谷川昌幸(C)
    ついに出揃いました。「日の丸・ヒマラヤ・ゾウ」の豪華三点セット完成。これでもう「ネパール国際平和協力隊」にイチャモンをつける不逞の輩はいなくなるだろう。日本国陸軍万歳!
     
    (CRF) 
    「ネパール国際平和協力隊」は,陸上自衛隊「中央即応集団」からUNMINへ,「個人派遣」されている。この国連のような,国家のような,そしてはたまた個人のような位置づけ(派遣隊員のアイデンティティ)は,いかにもポストモダン。この団旗(団シンボル?)では,日の丸が世界の中央に君臨している。ポストモダン版「八紘一宇」をデザインしたものか?
     
    (2次隊報告より)
    ヒマラヤ背景に,陸自隊員の平和貢献
     
    (3次隊報告より)
    ゾウも陸自隊員を歓迎。チトワン?
    7/24/2009

    安保理,UNMIN条件付き延長を承認

    谷川昌幸(C)
    安保理が,7月23日,ネパール政府要請(7月7日付)を受けた潘事務総長の勧告(7月14日付)に従い,UNMINの半年延長(2010年1月23日まで)を全会一致で承認した。うかつなことながら,この種の手続きがこんなギリギリになるとは,知らなかった。
     
    興味深いのは,安保理の決議内容。プラチャンダ前首相らの活劇型政治 に相当立腹しているらしく,延長は認めたものの,イヤミたらたらの条件付きだ。決議によれば――
     
    UNMINは暫定措置であり,いつまでも延長されると勘違いするでないゾ。ネパール政府はまじめに,ちゃんとやれ。
     
    事務総長は,2009年10月30日までに,ネパール政府とUNMINが約束した義務をまじめに果たしているか調査し,報告を安保理に提出せよ。まじめにやらないと,UNMINはおしまいにするゾ。
     
    このように,安保理は,かなり怒っている。あるいは,怒った振りをしている。国連政治もスゴイが,ひょっとしたらネパール政治の方が上かもしれない。ネパール政界,政治家諸氏を見ていると,こんなスゴイ練達の政治は,日本の政治家にはとても真似できないと感心する。
     
    ネパール政治のエートスは,まじめに研究するに十分値する。
    7/23/2009

    UNMINの任期,半年延長

    谷川昌幸(C)
     UNMIN(国連ネパール政治ミッション)の任期が,もう半年延期され,2010年1月23日までとなる。潘国連事務総長がネパール政府からの延長要請へのレポート(7月13日付)で国連安保理に半年延長を勧告した。
     
    ネパール和平は,制憲議会による新憲法制定が最大の目標である。制憲議会の任期は,暫定憲法第64条により,2010年5月末まで(半年延長可能)。UNMINは,和平実現のため,少なくとも新憲法制定までは継続せざるをえないであろう。
     
    このUNMINの任期延長には,インド以外には反対はない。UNMINのおかげでネパールには金と職がもたらされ,国連はヒマラヤをバックに絵になる平和支援活動を継続できるからだ。おまけに,他の地域のような危険はほとんどない。安全で絵になる平和支援活動。だから,期間延長は間違いない。
     
    しかし,UNMINないし国連の平和支援活動の評価は難しい。たとえば,国連介入のおかげで,ネット情報が革命的に増えた。ネパール政府は,いまや日本政府以上に情報化されている。在ネパール国連諸機関や,NGOを含めると,膨大な量のネパール情報が日々発信されている。情報氾濫,もうお手上げだ。
     
    こうしたネット情報発信は,スポンサー側にとっても好都合だ。援助の成果が,ヒマラヤや寺院の写真と共に美しくアレンジされ,ネット上で配布され,世界中で読まれ称賛される。絵になる国は援助のしがいがある。ネット情報発信は援助ビジネスのニュー・トレンドなのだ。
     
    しかし,こうしたネット情報は,表面の波(ウェッブ)の下の潮流を見えにくくもする。村や町の人々の生活の実態,社会に対する人々の心情,つまり「人心」である。波乗りを楽しんでいるうちに,深層では不満が蓄積し,「人心」が荒廃している,ということであれば,これは恐ろしい。
     
    UNMINや他の国連機関の援助活動が,ネパールの人々の生活を実際にどう変えつつあるのか。ネット情報だけでは,そこのところがよくわからない。
     
    (注)「1年延長」→「半年延長」に訂正(7月23日)
     
     
    7/20/2009

    国連と「正義による平和」

    谷川昌幸(C)
    報道によれば,国連人権高等弁務官事務所ネパール(OHCHR-Nepal)は,「正義(裁判)による平和(Peace through Justice)」プロジェクトに着手するという。
     
    資金200万ドル(年間)は国連ネパール平和基金(UNPFN)から支出される。この基金には,ノルウェー,英,デンマーク,カナダ,スイス,そして国連平和構築基金が拠出している。日本の名はないが,おそらく国連平和構築基金を媒介として(一種のマネーロンダリング),日本も大金を拠出しているはずだ。
     
    UNPFNは,これまでマオイスト戦闘員資格審査,カントンメント(駐屯地)改善,選挙支援,地雷撤去を資金面で援助してきた。今度は「正義(裁判)」ということのようだ。しかし,紛争後の平和再建は,なかなか難しい。紛争中の人権侵害や他の様々な損害をどう処理するか?
     
    一つは,真実和解委員会方式。「包括和平協定5.2.5」と「暫定憲法第33条(s)」に真実和解委員会規定があり,ネパールでもこの方式をとることになっている。委員会設立のための法案は2007年7月に提出されたが,委員会が設立され活動しているかどうか,今のところ情報はない。 (平和復興省組織図では「委員会設立準備中」だが,2009-10予算案には「真実和解委員会」予算割当と表明されている。どうなっているのか,よくわからない。)
     
    もし真実和解委員会方式をとるのであれば,紛争中の加害行為は「真実」をすべて認め謝罪することにより,赦され,刑事的処罰はされないことになる。応報的処罰よりも,「真実」を明らかにし被害者と加害者が和解することが優先されるからである。
     
    先日,日本人戦犯に対する中国側の処遇を綿密に取材したドキュメンタリー「認罪:中国撫順戦犯管理所の6年」を観た。テムジン制作で,NHKハイビジョン特集として放送された。なかなかの力作で,2008年度ギャラクシー賞を受賞した。この時代にはまだ「真実和解」の概念はなく,この作品も「真実和解」を掲げたものではないが,内容的には日中両当事者が「真実和解」にいたる過程の克明なドキュメントといってよいものである。
     
    番組によると,中国人虐殺・虐待に関与した日本人たちが撫順戦犯収容所に入れられ,中国側から自己の行為を直視することを求められる。当初,収容された日本人たちは警戒心・猜疑心に駆られ心を閉ざしていたが,中国側の配慮と説得に少しずつ警戒を緩め,自分の過去の行為に目を向け,やがて自分の犯した行為を認め包み隠さず告白し始める。こうして認罪をした日本人たちに対し,中国側は罪を赦し,日本への帰還を認めた。これは,周恩来という卓越した指導者がいて,処罰を要求する強硬な世論を押さえ,真実和解のため強力に指導したからこそ実現できたことであろう。
     
    このドキュメンタリー「認罪」を観ると,戦時の虐殺などのもたらす激しい憎しみは,加害者の処罰だけでは決して癒されないことがよくわかる。虐殺の事実を見つめることは,加害者にとって,実際には,耐え難い苦痛だ。加害者がその苦痛に耐え「事実」を認め,心から謝罪するとき,被害者側からの赦しが可能となり,真実の和解への道が開けてくる。「認罪」は,真実和解がどのようなものであるかを,歴史的事実の再現を通して見事に描き出していた。
     
    国家間戦争であった日中戦争とは異なり,ネパール人民戦争は内戦であり,和平後も両当事者は同じ国内に住む。同じ村,隣近所ということさえ少なくない。したがって,現在のネパールの方が,日中戦争後よりも,真実和解委員会方式が平和再建には有効な場合がはるかに多いと考えられる。しかし,憲法に定められ,委員会設置法案も準備されたはずだが,委員会が設置され活動しているという報道は目にしない。やはり周恩来やネルソン・マンデラといった卓越した指導者がいないと,真実和解委員会による平和の実現は無理なのかもしれない。
     
    そうしたこともあってか,今回,UNPFNは「正義(裁判)による平和」方式をとり,平和復興省を中心にそれを実施していく。紛争中の人権侵害や国際法違反を調査し,法に照らして裁き,正義を実現し,もって平和を実現する方針のようだ。
     
    周知のように,人民戦争中には,政府側,マオイスト側に,おびただしい人権侵害,国際法違反行為があった。初期・中期の警察隊による住民虐殺ではコイララ元首相,スパイ・リンチ殺害や子供兵徴用ではプラチャンダ前首相も,尋問されざるをえない。「正義」の観点に立てば,それらを一切見逃さず徹底的に調査し,責任を明確にし,厳正に処罰しなければ,平和は再建されない。カントもいうように,「たとえ世が滅ぶとも,正義は実現されなければならない」のだ。
     
    しかし,他方,人民戦争は内戦であり,「正義」を求めるなら,隣人いや兄弟,父子ですら告発し,裁き,処罰する覚悟が求められる。しかも,実際には「事実」は多面的であり,目を見開いて事実を検証しようとすればするほど「事実」は多面化する。正義の女神テミスは,目隠しをしていては「事実」は見えない。裁判で一つの「真実」を発見できるチャンスは,そう多くはない。その結果,多くの場合,「正義」実現の過程で,「事実」をめぐる争いが激化し,相互の憎しみが再燃,報復感情が先に立ち,悪循環となってしまう。正義の要求が次の紛争を呼び起こすことになる。
     
    カブレパランチョーク郡裁判所のテミス(2004.10.01撮影)。目隠ししたギリシャ(ローマ)の女神が,どうしてネパールの正義を守れるのか? 
     
    難しいことだが,内戦という事実,敵も味方も隣人という厳しい現実を見据え,よりましな現実的な解決策をさぐるより方法はない。「正義による平和」だけでは十分ではない。それと「真実和解による平和」とを組み合わせ,一歩一歩平和に向かって前進する以外に方法はあるまい。
     
    (参照) "UN peace project kicks off," ekantipur, Jul.18
    6/19/2009

    ネパールの治安悪化とテロリズム

    谷川昌幸(C)
    ネパールの治安悪化が進行し,このままではテロリストの隠れ家となりかねない。
     
    マオイストは,きちんとした綱領と組織を持つ「叛徒」であり,厳密にはテロリストではなかった。暴力革命だから,非合法であり,体制にとっては危険ではあっても,政治の論理に従っており,対応できない勢力ではなかった。
     
    これに対し,本物のテロリストは,もし攻撃――特に自爆攻撃――を決意されたら,もはやどのような抑止力も利かない。核兵器で脅しても,一人のテロリストの攻撃ですら止められない。近代的・合理的抑止力論は,そこではまったく無力である。
     
    かつてネパールには,日本赤軍の城崎勉氏が潜入した(正規メンバーではなかったともいわれている)。城崎氏は,1992年頃レバノンを出て,偽造旅券でネパールに潜入,僻地で鍼灸医,医療ボランティアをしていた。1996年9月19日,カトマンズで偽造旅券容疑で拘束され,22日FBIにより米軍機でワシントンへ連行,ジャカルタ事件(1986年)容疑で起訴され,禁固30年が確定,現在,連邦刑務所で服役中だ。
     
    この有罪判決の正否はさておき,すでに1990年代前半において,インターポールから「テロリスト」容疑をかけられた城崎氏のような人にとって,ネパールは有力な潜伏先の一つであったのだ。
     
    現在のネパールは,1990年代前半よりも,はるかに治安悪化している。地域社会が安定しておれば,潜入・潜伏は難しい。ところが,いまでは地域社会は衰弱・混乱し,警察も弱体化している。テロリストにとっては,格好の潜伏先といえる。
     
    いま世界は,ますます住みにくく不安定な社会となっている。テロリズムの危機は,世界各地に広がり,日本も例外ではない。そうした状況であればこそ,ネパールの早期安定が日本と世界の安全のためにも強く求められるのである。
    5/25/2009

    UNMIN代表の責任,さらに追求

    谷川昌幸(C)
    コングレスが,先日につづき,ランドグレンUNMIN代表に書簡(5月19日)を送り,彼女の初歩的誤りを指摘し,訂正を要求している。
     2009/05/15 UNMIN代表糾弾,NC議員有志
     2009/05/20 UNMINの女々しい弁解

    1.NCはカトワル統幕長解任に同意しなかった
    レプブリカ(5月25日)によれば,ランドグレン代表は,安保理への報告(5月5日)において,NCは当初カトワル統幕長解任に賛成だったが,あとで変節し反対に回ったと説明した。ところが,記事(NC書簡)によると,これは真っ赤なウソだという。

    ランドグレン代表は,この部分をプラチャンダ首相発言として安保理に説明しているが,記事によると,プラチャンダ首相はそのような発言は一切していない。

    2.カトワル統幕長の任期は3年
    もう一つの初歩的誤りは,軍隊法の誤解。ランドグレン代表は,統幕長は軍隊法第11条により閣議決定をもって解任されると説明したが,これは誤解であり,同条第4項では,同法施行時(2006年9月28日)の統幕長任期は3年とされている。つまり,2009年9月27日まで彼の任期はあるのだ。

    .憲法と大統領の正当性
    ランドグレン代表は,暫定憲法と大統領を不当に非難している。まるで憲法と大統領に混乱の責任があるかのようだ。これは政治的動機に基づく根拠なき攻撃だ。

    ――以上がレプブリカ記事の概要だ。NC書簡によるものであり,その点は考慮すべきだし軍隊法もよく検討してみなければならないが,記事だけ見ても,ランドグレン代表に勝ち目はなさそうだ。あまりにもスキだらけだ。

    ネパールの政治家,とくにプラチャンダ議長(前首相)の発言には要注意だ。UNMIN代表の前でホイホイ調子の良いことを言ったかもしれないが,ジャーナリストでなくとも,発言の裏を取るくらいの慎重さは必要だ。

    また,憲法にせよ他の法律にせよ,ネパールの法規は,インド5千年の叡智により高度な複雑性,つまり多義性をもっている。当然,解釈も慎重であるべきだ。

    結局,UNMINは謝らざるをえないのではないか。それとも,国連の権威と金でNC(≒印)を押さえつけることになるのだろうか。いや,老獪なNC(≒印)のこと,矛を収めた振りをして実利を取ることになるのかもしれない。


    5/21/2009

    軍民一体型PRTは日本NGOの危機

    谷川昌幸(C)
    日本政府が,ついに一線を越えた。アフガンPRTへの文民派遣を決定したのだ(朝日,5月21日)。
     
    Provincial Reconstruction Team(地域復興チーム)とは,軍民一体で復興支援に当たるもので,アフガンにはNATOが部隊を派遣している。今回決まったのは,中西部のリトニア軍部隊への文民派遣だ。外務省職員2名,公募で2名が選出され,大使館書記の身分でPRTに参加し,リトアニア軍部隊と一緒に教育,医療などの支援活動をする。
     
    このような軍民一体型支援活動がいかに危険かについては,中村哲氏をはじめ多くのNGO関係者が指摘しているし,私自身も何回か指摘した。特に日本NGOの場合は,軍とは無関係ということが世界中で知られ,それがNGO活動家の大きな安全保障になってきた。今回のアフガンPRT派遣でそれが一気に崩れてしまう。
     
    軍民一体型支援は,日本政府のねらい目だった。ここにまず文民を送り込み,次に自衛官を送る。これにより,自衛隊海外派兵の領域が無限に広がり,軍需産業もうるおう。
     
    それにしても,不思議なのが朝日新聞。この記事では,軍民一体型への懸念を示しているが,そもそも軍民一体型支援活動を日本も積極的にやれ,とけしかけたのは朝日社説自身だ。マッチで火をつけておいて,自分で消そうとする。マッチポンプの朝日といわれても仕方あるまい。
    5/20/2009

    UNMINの女々しい弁解

    谷川昌幸(C)
    国連機関がこんなみっともない弁解文書を出すとは,驚き,あきれ,がっかりした。プラチャンダ議長(首相)の方が,役者が何枚も上だ。
     
    UNMINの活動は,ネットで見るくらいで,具体的なことはよく知らない。限られた情報だから間違っていたら訂正していただきたいが,少なくともこの文書は,お役所のいいわけ,責任逃れ,としか受け取れない。
     
    この弁解文書だけを見ても,UNMINが軍事専門家などを派遣し,マオイスト戦闘員の「登録と認証」に深く関与したことは間違いない。UNMINは,「個々人の軍暦や身分証明書」を集め,「面接調査」をし,それに基づき不適格者を除外し,最終的に19,602人と判定したのだ(下記文書参照)。
     
    むろん,形式的には諸政党,政府機関などが複雑に絡んでいるのだろう。その詳細は私には分からない。しかし,UNMINがお膳立てし,指導し,「登録と認証」をし,「19,602人」に「国連認証済み」のお墨付きを与えたことは,紛れもない事実だ。どんな言い訳をしようが,国連は「19,602人」に責任がある。
     
    もちろん,こんな数字自体にたいした根拠がないことは,自明のことだ。これは,マオイストと7党政府と国連との「政治的妥協」によって決着した数字だ。和平交渉は,これまで,それを暗黙の了解事項として進められてきた。ところが,どこかの誰かが,その裏取引を世間にばらしてしまったのだ。
     
    ここで感心するのがネパールの政治家たち。こんな裏取引暴露には,まったく動じない。プラチャンダ議長(首相)なんか,これ幸いにと,実は7万人以上いるのだ,とすごみ,さらに追加させようとさえしている。
     
    これに対し,オタオタして,哀れなのがUNMIN。「事実」はつくられるものだから,この程度のことなど聞き流し,「UNMINが19,602人と認定したのだから,19,602人なのだ」と突っぱねればよいだけのことだ。
     
    この程度の政治取引もできず,こんな情けない責任逃れの弁明書を出す。なんたる女々しさ。これでは,老獪なネパール政治家たちには到底対抗できない。国連官僚主義の悪弊が露呈したといわざるを得ない。
     
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    UNMIN Press Statement
           on
    Registration and Verification of Maoist army personnel
     
    19 May 2009
     
    This statement has been released in response to concerns and controversies in the media for the past few weeks regarding UNMIN’s role in the registration and verification of Maoist army personnel.
     
    The Agreement on Monitoring of the Management of Arms and Armies (AMMAA) signed by the Government of Nepal and the CPN-M on 8 December 2006 sets out criteria for the definition of “Maoist army combatants.” There are only two conditions of eligibility: joining service before 25 May 2006, and having been born before 25 May 1988.
     
    The Government and CPN-M decided that possession of a weapon was not a criterion for eligibility. Presentation of a Maoist army identity card was required to demonstrate service.
     
    The AMMAA also created the Joint Monitoring Coordination Committee (JMCC), chaired by UNMIN, with membership by both the Nepal Army and the Maoist army. It is the only forum that brings together the two armies to jointly supervise and discuss compliance with the Agreement.
     
    UNMIN’s role in registration and verification of Maoist army personnel
    The Government and CPN-M requested UNMIN to undertake the registration and verification of Maoist army personnel. UN teams made up of a military expert from UNMIN and a reintegration expert from the United Nations Development Programme (UNDP) conducted registration, and staff from the United Nations Children’s Fund (UNICEF) with background in children’s rights later joined in the verification phase, UNMIN was not requested to verify whether the registered Maoist army personnel were eligible for integration into the security forces. This issue is to be considered by the inter-party Special Committee to supervise, integrate, and rehabilitate Maoist army, which held its first meeting on 16 January 2009.
     
    UNMIN’s task during Registration
    UN teams collected personal military information and examined identity cards. This began on 17 January 2007 and the results were reported to the Joint Monitoring Coordination committee (JMCC) in February.
     
    UNMIN’s task during Verification
    The UN teams conducted the verification of registered Maoist army personnel between June and December 2007. The JMCC discussed and agreed to the process and questions developed by the United Nations for the verification. UN teams verified the eligibility of the registrants through detailed individual interviews conducted in confidence. Language assistants and a military pediatrician were also present with the UN teams. The teams referred cases raising any doubts for higher-level review.
     
    Result of the verification and briefing to political parties
    The Special Representative of the Secretary-General in Nepal (SRSG) briefed senior political leaders on progress during the verification process, in addition to regular briefings by the Chief Arms Monitor to the JMCC. Representatives of political parties represented in the Seven-Party Alliance inspected the verification process in one cantonment.
     
    The verification exercise found 2,973 minors (born after 25 May 1988), who were disqualified. 1,035 persons were disqualified as having been recruited after 25 May 2006. 8,640 registered individuals did not present themselves for the verification process and were thus disqualified. The number of verified Maoist army personnel was 19,602.
     
    The SRSG gave the final report on verification to Minister of Peace and Reconstruction Ram Chandra Poudel of the Nepali Congress, and CPN-M Chairman Pushpa Kamal Dahal “Prachanda.”
     
    Background:
    Mandate of UNMIN
    In 2006, the Seven-Party Alliance Government led by the Nepali Congress, and the Communist Party of Nepal - Maoist (CPN-M), requested United Nations assistance in conducting the Constituent Assembly elections and supporting the peace process. The United Nations Mission in Nepal (UNMIN) was established by the United Nations Security Council on 23 January 2007, as a special political mission.
     
    After the April 2008 Constituent Assembly election, UNMIN’s mandate now includes these tasks:
     
    Monitor the management of arms and armed personnel of the Nepal Army and the Maoist army, in line with the provisions of the Comprehensive Peace Agreement signed by the Government of Nepal and the CPN-M on 21 November 2006.
     
    Assist the parties through a Joint Monitoring Coordination Committee (JMCC) in
    implementing their agreement on the management of arms and armed personnel.
     
    ---------------------------------------
     

    UNMIN Arms Monitering (http://www.unmin.org.np/?d=activities&p=arms)

     

    At the start of the Mission, the first step for UNMIN's arms monitors was to register Maoist army personnel and weapons, and to store the weapons under 24-hour surveillance. An equivalent number of Nepal army weapons were stored under the same conditions. This was done in January-February 2007, with the assistance of UNDP registration teams and UNICEF child protection personnel as well as the Interim Task Force (ITF), established by the Government of Nepal in cooperation with the Maoists and comprised of 111 Nepali ex-Gurkha members of the Indian Army. 
     
    Total number of Nepal Army weapons registered and stored: 2,855
    Total number of Maoist army weapons registered and stored: 3,475
    Total number of Maoist army personnel registered: 32,250
     
    Verification of the registered Maoist army personnel was conducted by UNMIN arms monitors working with UNDP registration teams and UNICEF child protection teams, as well as language assistants. The process was completed in December 2007.
     
    Of the 32,250 registered Maoist army personnel:
    19, 602 were verified as meeting the criteria agreed between the parties, comprising 15,756 men and 3,846 women
    8,640 personnel did not appear for verification interviews in the second phase and were automatically disqualified
    4,008 persons remain to be discharged from cantonments after the total of absentees has been taken into account: 2,973 of this total were assessed to be under the age of 18 on 25 May 2006.
     

     
    5/17/2009

    英語植民地の「ミサイル発射」誤報調査報告

    谷川昌幸(C)
    この4月4日,北朝鮮「ミサイル発射」誤報があり,自衛隊の信用は地に落ちた。自衛隊は,日本防衛に役立たないどころか,逆に,誤報偶発戦争を引き起こしかねない危険な存在であることが明らかになった。周辺諸国は,自衛隊に予測不能の脅威を感じているであろう。
     
    その誤報の原因について,私は「カタカナ英語だ」と直感し,そのようにこのブログにも書いた。
     
    そのときは具体的な根拠はなかったが,どうやらそれが事実らしいことが,朝日(5月15日)掲載の防衛省報告書で明らかになった。 「発射誤報の検証(概要)」によれば,防空指揮群から「スパーク・インフォメーション」「飯岡探知」という連絡を受けた航空総隊司令部担当官が,「飯岡探知」「SEW入感」と取り違え,伝達した。これが誤報の原因であったという。まるでカタカナ英語呪文だ。寸刻を争う緊迫時にこんな呪文に頼っていては,誤報発生は当然だ。
     
    SEWとは,Satellite Early Warning,つまり「衛星早期警戒情報」で,これは米軍に全面依存。では,「スパーク・インフォメーション」とは何か? たぶん,Spark Information,つまりミサイルが発射されれば火花が出るから,その「花火情報」ということだろう。
     
    スパーク・インフォメーション
    イイオカタンチ
    エスイーダブリュー
    ニューカン
     
    こんなカタカナ英語,非日常的ニホンゴが,緊迫した指令部で飛び交っていたわけだ。実際には,他にも同様のジャーゴンが多数混じっていたはずだ。これじゃ,混乱,取り違えが起こるのは当たり前だ。
     
    英語植民地・日本は,いつ誤報先制攻撃を仕掛けるかわからない。周辺諸国は不安に怯え,対策を練っていることだろう。
    5/16/2009

    ネパールを海外派兵宣伝に利用

    谷川昌幸(C)
    日本政府が,「政府インターネットテレビ」で,「ネパールにおける日本の平和維持活動」を放送している。 厳しい批判を気にして,まだ控え目だが,それでも「子供」や「仏様(スワヤンブー)」が日本陸軍(Japanese Army)の宣伝に巧みに利用されている。
     
    国営放送だから,予算は潤沢,動画にもかかわらず,映像は極めて精細で美しい。(写真はJPEG圧縮。クリックでオリジナル映像が見られます。)こんなことをされては,とてもじゃないが,貧乏市民運動は対抗できない。
     
    軍事思考は,どこでもよく似ている。インドが核実験に成功したときの合い言葉は,「仏が微笑んだ」だった。
     
    非暴力・不殺生の仏様の国が,日本軍の海外展開宣伝に利用されないよう,さらに厳重に監視すべきだろう。
     
     無邪気な子供の利用
     
    非暴力平和主義・仏陀(スワヤンブー)の利用